2014年02月26日
山中iPS細胞、そして小保方STAP細胞フィーバーの中、再生医療こそが超高齢社会における健康社会実現の救世主のように叫ばれている。先日、政府官邸から発表された、独立行政法人「日本医療研究開発機構」(旧日本版NIH)の中で述べられている国家戦略(筆者は、これは戦略ではなくただ単なる戦術に過ぎないと思うが)の中でも、再生医療は中心的な位置づけのひとつになっている。しかし、多くの一般市民は、「再生医療=健康長寿」という国家的スローガン、またメディアによる宣伝におどらされ、本質はあまり理解していないのではなかろうか。
もちろん、再生医療の実現は、多くの人々の命を救うことになる。しかし、再生医療には「内科的治療」と「外科的治療」の2つがあるにもかかわらず、現在の日本の研究開発の多くは「外科的治療」のみを目指している。その問題点を指摘し、「内科的治療」に向けて世界で粛々と進んでいる研究の現状を紹介したい。
iPS細胞をもちいて実現させようとしているのは、臓器を体外で新しく作って悪くなったものと取り換えようという医療だ。薬を飲んだら治るといった治療に結びつく可能性は低い。手術を要する治療、つまり身体を切り開き、壊れた臓器を取り替える、これが「iPS型再生医療」である。外科的手術の難点は、身体への負担が大きく、また治療費が高額であるという二点だ。特に超高齢社会においては、この難点は個々人への身体的・精神的・経済的負担が大きくなるというだけでなく、国家レベルでの経済も圧迫する。もし、薬を飲めば壊れた臓器が自然と治癒するという「内科的」再生医療が実現すれば、これらの難点は解決し、高齢者へ「やさしい」医療が実現されると考えるのは筆者だけであろうか。
実は、この「内科的」再生医療を実現できる可能性のある研究が進んでいる。
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