2014年04月09日
日本が南極海で行っている調査捕鯨を巡って日豪が争った裁判で、国際司法裁判所(ICJ)から日本完敗の判決が出た(3月31日)。「予想外の結果」「まさかの完敗」「日本外交の読み誤り」といった日本側の受け止め方(朝日デジタル4月1日、2日付)が、おおいに気になった。米国在住の筆者は欧米メディアにふれる機会も多く、かねてから内外の温度差に気づいていた。捕鯨の問題自体は、(後で述べるように現実的に考えれば)国の行く末を左右するほどの事態とは思えない。だが官民を挙げての「国際オンチ」ぶりは、数十年前と比べてもむしろ悪化しているように感じられ、こちらは深刻だ。その後「安倍首相が関係者を叱責」という報道はあったが(同4月2日付)、「読み誤り」の原因をさして掘り下げることもないまま、忘れ去られようとしている。
今回の判決を海外メディアはおおむね好意的に伝えた。もともと海外メディアは捕鯨に批判的なものが多かったので、当然のことだろう。
また少し前の話だが、ケネディ駐日米国大使は、和歌山県太地町伝統のイルカ漁について、「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」 とツイッターに書き込んだ(今年1月18日)。個人としてではなくて「米国政府」と言っているところが肝だ。だが日本では「なんだ、シーシェパードなどの過激派に賛成なのか。意外」というふうに受け止められ、ネットで炎上した。
さらに遡ってちょうど1年前、ニューヨーク・タイムズは「捕鯨に反対する多様な戦場」と題する記事を掲載(昨年4月3日付)。 「捕鯨というと、19世紀的なイメージを連想する」という一文からはじめて、反捕鯨に近い分析と予想を展開している。こうした例に限らず、今回の判決が出るずっと前から、欧米での多数意見 は読めたのではないか。
ここには合意形成についての、内外の根本的な差が見て取れる。
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