メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

洪水とヒートアイランド対策の一石二鳥となる「溜め池」の知恵の活用を

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 広島市北部で大規模な土砂崩れ災害が起きた。

 集中豪雨の被害は未だに深刻な問題だ。土砂崩れや河川氾濫(はんらん)などの昔ながらの被害だけでなく、近年はアスファルトなどのために水が集まってしまう都市型洪水も問題になっている。保水力を失ったはげ山で起こる鉄砲水の都市版である。この手の洪水は、集中豪雨というより人工構造物が原因と言っていいだろう。

 その一方で猛暑による熱中症などの被害も年々増えている。だから放熱を促進する打ち水が推奨されているが、その水の大半は水道水だ。片や都市型洪水が騒がれ、片や水をまく。水の流れがおかしくはないか?

 水利学は私の専門からずれるものの、水にせよ、太陽光エネルギーにせよ、オーロラ粒子にせよ、マグマにせよ、そのダイナミックな流れは地球科学共通のテーマだ。その中で過剰な供給を一時貯蔵して緩和するという視点で洪水対策に関して私見を述べたい。

 氾濫は、排水が集水に追いつかないことで起こる。各自治体とも下水道の整備などを通じて排水の向上に努めてきた。しかし、上から下に流れる形の排水をいくら高めたところで限界がある。たとえば8月上旬の高知豪雨では、仁淀川の水位が支流より高くなって支流域の住宅が水に浸かった。これは、仁淀川を全流域で倍の深さにしゅんせつしてすら解決するかどうか分からない。

 一方で、同じ降雨量でも、その水が向かう先が集中するほど、単位面積当たりの集水は多くなる。特にアスファルトに固められて地面への吸収がない市街地では、

・・・ログインして読む
(残り:約1709文字/本文:約2346文字)