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省資源・省エネルギーの都市を戦略的につくるべきだ

小林光 東京大学教養学部客員教授(環境経済政策)

地方都市の創造的な取り組み

 元岩手県知事の増田寛也氏が世に問うた地方消滅論が話題になっている。現在のトレンドを延長すると、多くの地方自治体で、ますます子供が生まれなくなり、また、若者が集まる東京圏でも子供は産みにくいままで、結局、ますます人口は減り続け、地方は疲弊することになってしまう。

 人口密度の下がる多くの地方都市では、行政は非能率となってコストは増高となり、賑わいを維持することはますます困難になる。そこで、登場してきた考え方は、就労機会や大規模な公益施設を地方中核都市のような拠点へ集中させるといった地方レベルでの機能再配置、また、個々の都市レベルでは、郊外からの撤退と中心街区への集約によるコンパクトシティ化である。既に具体的な算段の一部が法制度化されるようになってきている。例えば、今年度に法改正のあった「都市再生特別措置法」において、都市機能や居住機能の立地を、誘導を通じて適正化していこうという仕組みが導入された。

 地方が住むに値する場所として住民に選択してもらい続けるには、これまでどおりのまちづくり、取り組みではいけないし、単に縮小均衡を目指すのでも解決にはならないのであって、働き甲斐のある就業機会や子育て機会を含む地域の魅力を、住み手目線で積極的に作っていかなければならない。

 論者は、民間人口臨調と銘打った研究会にたまたま参加していることもあって、縮退時代に積極的な生き残りの方向で掉さす創造的な取り組みをしている自治体を自主的にいくつか見学してきている。ここでは、それらのうち2つの例を紹介しよう。一つは、海士町(あまちょう)であり、もう一つは青森市である。

 島根県海士町は、隠岐の島々の一つで、直接の空路はなく、本土からは洋上をフェリーで揺られること4時間くらいの日本海の沖に浮かぶ島である。人口は2千数百人であるが、最近は、都会からのIターン者なども移り住んできているし、島の高校の寄宿舎へわざわざ入学してくる学生もいて、人口は上向きつつある。

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 写真3:高性能の急速冷凍装置高性能の急速冷凍装置
 その秘密は、自然に恵まれていることももちろんであるが、島から、東京市場や世界に向けて視線を巡らし、高い質の活動の創出を目指していることにあるように思われた。例えば、島のおいしい岩ガキや剣先イカを、通年、生かと思われるような鮮度で食べられるように保存する高性能の急速冷凍装置(写真3)、島と世界の両方を学ぶglocalな教育で名を馳せ、島留学を受け入れている隠岐島前高校の存在が、大きく定住人口の増加に貢献している。

 青森市は、2000年ごろから、都市のスプロールに抗する強い都市計画を構えて、今でいうコンパクトシティを標榜したまちづくりを進めていた。人口は、最大32万人ぐらいから28万人ぐらいへと御多分に漏れず減少傾向ではあるが、中心市街地には、シャッター街が広がるわけではない。同市では、市街化区域がDID(人口集中)地区とよく重なっていて、スプロールした密度の低い、それゆえ行政サービスのコストが割高となる市街地をほとんど抱えていない。その都市計画図を見ると、他の都市のヒトデのような、タコのような用途地域図ではなく、旧市街を要にしたきれいな扇型で、教科書に載せたいようなものである。市街化区域の外側は、開発規制が厳格に適用される調整区域になっていて、整備された田園が広がっている。このような、国内では珍しい強い都市計画が行われている背景には、実は、除雪コストの負担がある。温暖化したとはいえ、ドカ雪も珍しくなく、年間の決算額が30億円に達することもあると聞く。

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街中居住のマンションで活性化をはかる街中居住のマンションで活性化をはかる
 青森市では、市街化調整区域を厳格に運用するだけでなく、他方で、中心街区の賑わいの維持増進に力が入れられており、活性化関係の補助金を活用しつつ、街中居住のマンションづくり(写真4)、閉店した商店に入居できる若者を育てるインキュベーションの場、開業を支援するパサージュ広場、産業遺産とも言うべき青函連絡船を中心としたウオーターフロントの整備などの施策を行っている。中心の目抜き通りの空き家率は、往時の20%近くから、現在は10%程度に下がってきている由である。また、青森が海にまっすぐつながる形の終着駅であったことから、北海道へとつながる新幹線の駅にはふさわしくなかったため、新駅は、市街化区域の西の端、青森駅の数キロ西方に作られたが、その周辺の用途地域では、高度制限の掛かった近隣商業地区が設けられていて、中心街区との役割の違いを際立たせている。

 青森では、残念ながら人口の減少が見込まれるため、さらなるコンパクト化に迫られることと思われるが、それにしても、都市計画本来の持つ力を理解するには恰好のまちと言え、市民の賢明な参加や協力の下、縮退時代の、新しい、智慧で賑わう都市が実現できるように期待できよう。

 ここでは、ほんの2例の紹介に過ぎないが、新しいまちづくりの芽ばえは十分に認められるのではないだろうか。

エネルギー地産地消の動き

 少子高齢化が新しいまちづくりを迫っているだけではない。わが国では、別の要因によっても、まちの仕組みを変えていかなければならなくなっている。その要因とは、一層自立的な、レジリアントなエネルギー需給の仕組みを地域に実装するとの要請である。福島の原発事故以来、大規模な発電所からの電力供給にすっかり依存してしまうと、災害時や事故時には、対応のすべがないことが痛感され、多くの住民、そして自治体が、エネルギーの地産地消に重要性を見出すようになった。

 論者の勤め先を管轄する意味で身近な藤沢市も、そうした自治体の一つであって、鈴木市長の下、エネルギーの一層の地産地消に取り組もうとしている。そのための計画づくりをすることとなって、論者は、その検討会の座長を仰せつかっている。

 ここでは、例えば、極力多くの太陽光パネルからの電力や、自前の廃棄物焼却施設からの電力を合わせて、地域発のPPS(新電力会社)を作り、そして、地域の大口電力消費者に売ること、といった、少し前まで各地を席巻していたFIT活用のビジネスモデルではない発想の導入が検討されている。

 また、太陽熱利用のような元々分散的な利用こそが費用対効果に優れた仕組みも見直されつつある。

 電力のグリッドは、系統電力のものを借用することが可能であるが、熱の共用は、専用の配管などを要し、ハードルは高い。しかし、老人施設、病院、学校の寄宿舎などといった熱需要も電気需要もある施設がまとまって立地しているような街区であれば、熱電併給のコージェネレーションで、高い熱効率を達成し、それゆえに、比較的高額な初期投資をペイバックできる可能性もある。藤沢市においても、例えば、湘南台からの相鉄線延伸に伴って新設される駅の周辺で、コージェネレーションを備えた一体的な街区開発が可能ではないかと、検討が進められている。

 総合エネルギー調査会では、現在、熱供給事業の在り方の見直し作業が始まっている。その流れは予断できず、熱供給義務付け、熱電併給の禁止といった事業の根幹はそのままに単に価格競争のみが自由化され、採算性に優れた箇所のみが熱供給事業として生き残るような道に進むのか、それとも、熱と電気を含めた地域の総合エネルギー産業として柔軟な発展の可能性が生まれるのか、岐路に差し掛かっているとも言えよう。

 デンマークなどの先進地域では、例えば、住宅地域でも、消費生活協同組合が運営する

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