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放射線量測定は気象庁のアメダスを活用すべきだ

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 鹿児島県の川内原発について原子力規制委員会が9月に「新基準を満たす」と判断したのに続き、11月7日に県知事が再稼働に同意した。

 いよいよ再稼働が目前に迫った感があるが、ここまでの審査で気になる点がある。それは、結局は以前の保安院から大きく外れず、議論されているのが安全対策に偏っていることだ。

 どのような施設であっても理論上の事故率より実際の事故率が高い。例えば米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルは多重の安全システムを施し、もしも想定事故確率どおりなら現役中に死亡事故を起こすはずはなかった。しかし現実には2度も重大事故を起こしている。航空機も設計上の事故確率と実際の事故確率は大幅に違う。だから航空業界などの運用側は、実際の信頼度で採用すべき航空機を決める。コンコルドは、事故が起こるまでは「設計上」一番安全と言われていたが、たった1回の事故で「実績として」一番危険となって運用が取りやめられた。

 実際の事故率が理論と大きく異なる理由は、設計上の事故確率が「人間が馬鹿げたミスをしない・故意の妨害もしない」「自然災害が想定外のダメージを与えない」「これらを含めて設計に見落としがない」という前提のもと、部品の信頼度などから導き出されるからだ。当然、使われる技術が高度な施設や製品ほど、人間要因以外の信頼度が高まるので、結果的に事故の多くが人間要因によるものとなる。これは工学設計の限界ともいえる。

 原子力施設の主な重大事故もまた人的要因や天災など、安全性の設計で計算できない「想定外」要因で起こっている。1979年のスリーマイル、1986年のチェルノブイリ、2011年の福島第一の全てがそうだ。日本国内だと他に1999年の東海村事故で手抜き作業で死者を出している。こうして実際に原子力事故が起こった頻度は「理論上の確率」を大幅に上回っているのである。

 そもそも事故確率は過去の実績でのみ語られるべきものだ。それから推定すると、原子力施設の重大事故は10〜20年に一度の割合で世界のどこか(日本とは限らない)で起こると覚悟するのが正しい。設計上の安全確率を引き合いに「確率的に安全だ」と主張する者は、私に言わせれば「無知」か「嘘つき」で、議論をする時間が無駄なだけだ。

 つまり、どんな基準で原発の安全を審査しても、大事故が起こる可能性は覚悟しなければならないのである。スウェーデンはその覚悟の上で原発を使用している。そして、そういう覚悟があれば、誰だって事故が起こった場合の対策を真面目に考えるだろう。ところが、この部分が原子力規制委員会の審査では旧態依然なのだ。

 事故対策とは、

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