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原子力小委の中間整理は「願望リスト」に過ぎない

「減少」と「確保」の矛盾は残ったまま、透明性も不足

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

 2014年末に経済産業省総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会(以下「原子力小委」)という長い名前の審議会が「中間整理」という報告書を公表した。原子力利用に関する政策を決める原子力委員会で「原子力政策大綱」の審議が行われていない現状では、政府として議論している場はこの原子力小委が唯一といってよい。一審議会の「中間整理」とはいえ、その影響は無視できない(法律上何の根拠もない首相の私的諮問会議が集団的自衛権を行使可能とする政策転換を提言し、それが現実の政策となったことを忘れてはならない)。そこで、中間整理の中身とその過程を検証してみたい。

「依存度減少」と「電力システム改革」が大きな変化

中間整理の目次
 中間整理は、総論に始まり、8項目の課題について論点を整理する形で合計37ページという比較的薄い報告書である。8項目とは、(1)福島第一原発事故の教訓(2)我が国のエネルギー事情と原子力の位置付け(3)原発依存度低減の達成に向けた課題(4)原子力の自主的安全性の向上、技術・人材の維持・発展(5)競争環境下における原子力事業の在り方 (6)使用済燃料問題の解決に向けた取組と核燃料サイクル政策の推進(7)世界の原子力平和的利用への貢献 (8)国民、自治体との信頼関係構築 、となっている。

 しかし総論のところで「(エネルギー基本計画では)原発依存度を可能な限り低減させていくこととしており、また、電力システム改革を進めていくことなどの状況変化がある中で、これらを実現していくためには様々な課題がある」と特記していることからもわかるように、中間整理の重要な視点は「依存度減少」と「電力システム改革」であることは間違いなさそうだ。他の課題は従来からの重要課題ということで、今回は(3)と(5)に注目してみよう。

「依存度減少」と「ベース電源として確保」の矛盾は残ったまま

 (3)では、「従前の各事業者の想定よりも早期に廃炉せざるを得なくなっている」との認識の下、廃炉時代にむけた様々な課題を取り扱っており、注目に値する。人材確保や、廃棄物処分といった技術的課題に加え、会計制度、交付金制度といった制度的見直しまで言及しており、課題の整理としてはよくまとまっていると思われる。ただ、

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