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[2]立体を好きに切って平らに開くと、さて?

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

トークショー「数学と理科の楽しみ方」(数学者秋山仁氏×生物学者武村政春氏×朝日新聞編集委員高橋真理子,2015年1月28日,東京理科大学数学体験館にて)の採録を続ける。

武村 オズワルド・エイブリーという分子生物学の方では非常に有名な方がいます。

秋山 全然知らない。

武村 遺伝子の本体がDNAであるということを世界で初めて証明した人です。アメリカのロックフェラー研究所という有名な医学生物学研究所の研究員をずっとされていた方で、1944年に実験で確かめたんですが、実はそのころシュレーディンガーという非常に有名な物理学者がおりまして……

秋山 シュレーディンガーは知っている。

武村 そのシュレーディンガーさんは『生命とは何か』というベストセラーを書かれて、遺伝子の本体はタンパク質であるとおっしゃっていた。それもあって当時は遺伝子タンパク質説が主流だった。エイブリーさんは肺炎双球菌というバクテリアを使って、バクテリアにある種のDNAを入れて、病原性「なし」から「あり」に変えるという実験をした。タンパク質を入れても変わらないし、DNAを分解してしまうと性質が変わらなくなる。それで遺伝子の本体というのはDNAなんだということをおっしゃった。

高橋 現代人は、DNAイコール遺伝子と考えているので、今のお話、ピンと来ないところがあったんじゃないかと思うんですが、DNAって物質の名前なんですね。タンパク質というのも物質の名前。そのどっちが遺伝情報を担っているのかが分からなかった。

武村 ありがとうございます。デオキシリボ核酸がDNAなんですね。核酸というのはDNAとRNAがあって、遺伝情報を担っているのはRNAでもないということをこの人は言っている。とにかくDNAだということを初めて言ったのがこの人で、それまでにもいろいろなご研究をされていたんですけれども、この業績がピカイチです。そのときのお年が67歳だったんです。

高橋 秋山先生は数学に年齢は関係ないとおっしゃいましたけれども、数学で一番権威あるフィールズ賞は40歳までという縛りがあります。これは数学界として40歳までにしか大きな仕事ができないぞと言っているんじゃないですか。

秋山 いや、

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