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[7]火消しと森づくり

星川 淳 作家・翻訳家、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト代表理事

 環境問題に関わる市民活動の財源について、環境分野で先進的な取り組みを続けるベテラン経営者と意見交換していたら、「不必要に人間の欲望を喚起させ、経済を発展させた収益からの寄付や税で社会問題を解決することの矛盾」を指摘された。私が2010年末に設立して運営を預かる市民活動支援のための民間助成基金(一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト)で、寄付基盤を拡充・強化する3年計画に動き出そうという文脈での話だ。

 この経営者自身も社会活動を支援するための公益財団を運営しておられるが、その傍ら「農」に根ざしたコミュニティづくりに力を入れ、それこそが持続可能な社会の土台だと提唱する。私も30年来、農薬と化学肥料を使わない農業の真似事を続け、暮らしの場だけでなく市民運動家として物書きとして有形無形の各種コミュニティ形成に関与した経験から、経営者の試みに意を強くする。とくに3.11以降、各地に同種の試みが広がりつつあることにもエールを送りたい。

 経営者とのやりとりでは、私はこうした試みを中長期的な「森づくり」にたとえる一方、さまざまな問題の最前線で短期的・対症療法的な最善を尽くすことを「火消し」と呼び、車の両輪のように両方がバランス良く必要だと応じた。水源を守って火を消す「水」を供給するためにも息の長い森づくりは大切だが、もしみんなが森づくりしかしなくなったら、問題という「火事」は放置され、ますます燃え盛ってしまうだろう。

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