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マイナンバー目前!ICT先進国・韓国の教訓とは

電子政府ランキング1位の韓国大臣から得られた貴重なアドバイス

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 国連が2年ごとに発表する電子政府ランキングで、2010年から3期連続で首位をキープしているのが韓国である。日本はといえば、17位→18位→6位と2014年に大幅に順位を上げたものの、韓国には水をあけられている。韓国では1968年に住民登録番号制が始まり、91年からこれを行政サービス提供の基盤として活用してきており、また、ICT(情報通信技術)の技術開発や社会実装に国をあげて取り組んできている。「マイナンバー」(社会保障・税番号)の利用が来年1月から始まる日本に比べて、相当先を行っていることは間違いない。その経験から日本が学ぶべきは何なのか。ソウルで6月に第9回科学ジャーナリスト世界会議が開かれた際、韓国・未来創造科学省のチェ・ヤンヒ大臣に聞いた。

インタビューに答える韓国・未来創造科学部長官チェ・ヤンヒ氏

 国連経済社会局がまとめる電子政府ランキングは、国連加盟193カ国を対象とした調査をもとに、オンラインサービス、通信インフラ、人的資源の3分野ごとに点数をつけ、それを総合して電子政府開発指標を算出している。最新の2014年版のアジア地域の分野別指標を見ると、オンラインサービスこそシンガポールが上回るが、残る2分野は韓国が1位。世界全体では分野別1位はオンラインサービスがフランス、通信インフラがモナコ、人的資源がニュージーランドとさまざまだが、総合成績では満遍なく高得点を得ている韓国が1位になっている。

 韓国では住民票や納税関係、自動車登録関係など行政に関係する多種類の書類をオンラインで処理できる。しかも、それが国民によく浸透していて、役所の窓口に来る人はめったにないという。

 こうした電子政府の基盤になるのが、個人番号である。韓国では一つの個人番号があらゆる機関で共通に使われている。日本でもさまざまな場面で個人番号が割り振られてきたが、「共通番号」は「国民総背番号制」と呼ばれて嫌われてきた。1983年には全国統一の納税者番号制度としてグリーンカードの導入がいったん決まったものの、「資産を国にすべて把握されたくない」といった反発が強く、結局、廃案になった。

 1999年の住民基本台帳法の改正で、全国の自治体で共通に使う個人番号が導入された。氏名、生年月日、性別、住所など住民票に書かれている情報に個人番号がつき、全国の自治体のシステムがネットワークでつながったのである。これで「住基カード」が市区町村でもらえるようになったが、実際にもらっているのは全人口の5%ほどに過ぎない。住基カードは「本人確認の身分証明書になる」のがメリットだが、日本は国民皆保険なので健康保険証で本人確認ができる。運転免許証を本人確認に使う場合も多い。わざわざ住基カードを持つ人は少なく、国民に浸透しているとは到底いえない。

 来年から使われるマイナンバーは、社会保障と税の管理のために個人につけられる12桁の番号である。納税者番号として使われる点でグリーンカードの復活と見ることができるが、年金や医療保険など社会保障による給付も守備範囲にしている点でより総合的な共通番号になっている。

 国民総背番号制が嫌われてきたのは、家計の中身を政府にすべて覗かれたくないという反発のほか、共通番号でさまざまな情報を引き出すことができればプライバシーが漏れる懸念が大きくなるという理由もある。番号が不正使用されて貯金が勝手に使われるといった可能性も共通度が高ければ高いほど大きくなる。

 韓国では、

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