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デジタルデータが消えて行く

未来へ情報を継承するためのデジタルアーカイブの課題

山下哲也 エバンジェリスト、山下計画(株) 代表取締役CEO

 今この瞬間に、世界で飛び交うデジタル情報量は膨大だ。電子メール、LINEでのチャット、Twitterでのつぶやき、Facebookへの写真の投稿、WEB上に流れるニュース。音楽やテレビ・映画といったメディア、株をはじめとする金融取引やホテル・飛行機の予約情報、街中の至る所にある監視カメラの映像も全てデジタルデータだ。

爆発的に増加するデジタルデータ

もはや仕事にパソコンは欠かせない=2015年8月、和歌山県庁、瀧澤文那撮影
 2013年に全世界で生み出されたデジタルデータの量は4.4ZB(ゼタバイト: 10の21乗)と米国調査会社IDCは推定している。仮にDVDで保存しようとすれば、9300億枚以上必要となる量だ。近年では、全てのものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)化の動きがデータ量の増大に拍車をかけつつあり、東京オリンピックが開催される2020年には44ZBにまで急増すると予想されている。

 21世紀は、誰もがデジタルデータを生み出し、瞬時に全世界へ発信・共有することができる、いわば奇跡のような時代だ。しかし一方で、私たちの活動の記録であるこれらデジタルデータのアーカイブ、いわゆる情報の記録と保存、未来への継承については、多くの課題を抱えている。情報がデジタル化されたことで、短期的には生成・編集・共有・配信が誰もが驚く程簡単に、かつ効率的に出来るようになった一方、長期的にはデータの読み取り・アクセス不能や消滅といったリスクが増大し続けているのが実情だ。

 今回は、華々しいIT革新の影で見落とされがちな、このデジタルアーカイブの課題と重要性について指摘したい。

デジタルデータの寿命は短い

 20世紀のITの歴史は、様々なデジタルデータの記録技術の歴史という側面も持っている。磁気テープやフロッピーディスクのような磁気ディスク、CDやDVDといった光学ディスクの他、メモリーカードやUSBメモリーに使われるフラッシュメモリー(不揮発性メモリー)などが開発され、幅広い分野で利用されている。絶え間ない技術革新により、記憶容量は飛躍的に増大し製造コストは大幅に下がったものの、特殊なケースを除きデータの保持期間は数十年程度に過ぎず、紙に書かれた古文書のように、1000年以上確実に安定して保存できるまでには至っていない。

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