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いま、沖縄の高江で起きていること

「緊急事態条項」の先取り

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 9月10日の沖縄の地元2紙(琉球新報、沖縄タイムス)は、国が民間のヘリで重機を運搬し、沖縄本島北部の高江で、オスプレイパッド建設を強行する写真を、1面トップに掲載した。その4日後には、なんと陸自のヘリまで出動してきた。やんばるの森の悲鳴が紙面から聞こえてくるようだ。

 やんばるの森は、「東洋のガラパゴス」とも称される生物多様性豊かな森であり、本土に比べれば単位面積当たり動物で51倍、維管束植物で45倍も多様な生き物が暮らしている宝の森である。このため国は、やんばるを軸とする奄美・琉球諸島を、ユネスコの世界自然遺産に登録することを目指している。まずは2013年に自然遺産暫定リストに記載し、今後は保護計画の策定、推薦書の提出を経て、世界自然遺産委員会での登録を実現しようとしている。9月15日、環境省は沖縄本島北部を「やんばる国立公園」に指定した。国立公園化は、世界自然遺産登録に不可欠の保護計画策定の一環である。

見えにくい国の矛盾

 8月30日、国際自然保護連合(IUCN)は、辺野古新基地建設に伴う県外土砂搬入を巡り、徹底した外来種混入防止対策を講じるよう日米両国政府に対する勧告を採択した。IUCNは、大浦湾のジュゴンに関しては2000年、2004年、2008年の過去3回、やんばるのノグチゲラ、ヤンバルクイナに関しては2000年と2004年の過去2回、その保全を求める勧告を両国政府に対して行っている。

沖縄・高江ヘリパッド 警察官に囲まれながら抗議する人たち。その前で資材などの搬入が始まった=7月23日、沖縄県東村高江、岡田玄撮影

 IUCNの勧告には強制力はなく、両国政府は過去の勧告は無視し、今回も勧告の採決に際して棄権し、その影響をまたもや、かわそうとしている。しかし世界最大の自然保護機関による今回の決議・勧告は、無視することが出来ない意味を有している。

 問題は、国が一方でやんばるの世界自然遺産登録が可能であるかのような夢を語り、他方で辺野古新基地建設や高江のオスプレイパッド建設を、本土から機動隊まで導入して強行するのは、明らかな矛盾であるということが、県民・国民の目に必ずしも見えていないことである。

 世界自然遺産登録に際しては、日本政府がユネスコ世界遺産センターに提出する推薦書を、世界遺産委員会の諮問機関が調査・評価する。実はその諮問機関がIUCNなのである。そして島嶼の世界自然遺産登録に際して、IUCNが最も重視しているのが絶滅危惧種の保全、外来種対策である。島嶼の自然は外来種侵入に極めてもろいからだ。

オスプレイを無視した自主アセス

 瀬戸内海以西の県外から、辺野古に搬入されようとしている1700万立方米の土砂の中には、アルゼンチンアリなどの極めて繁殖力の高い特定外来生物が含まれている可能性が大である。IUCNの勧告の無視は、

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