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科学館がグローバルな課題の解決に乗り出した

11月に世界科学館サミット2017を東京で開催

谷村優太 日本科学未来館プログラム企画開発課マネージャー

 「科学館」と聞くと、どのような印象をもつだろうか。私自身、科学館業界に15年間身を置いているが、当初は「子供のための施設」「学校の理科教育では学習できないことを展示や実験などを通して補完する施設」といった印象をもっていた。しかし、国内外の科学館を巡る中で、今、世界の科学館はネットワークを組み、全く新しい試みに挑戦し始めたと実感している。

アジア太平洋地域の6つの科学館と日本科学未来館が連携して実施した「幸せってなんだろう?」のワークショップ。未来館の地球ディスプレイ「ジオ・コスモス」に映し出す映像作品を日本と海外の中高生が協力して作った=2017年7月24日、日本科学未来館提供

 それは、世界中の科学館が従来のSTEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックス)教育の枠を超え、地球温暖化や生物多様性などのグローバルな課題、多様な関係者の利害関係が交錯する答えのない社会課題に対し、科学コミュニケーションを促して解決を図る一助となろうとする大きな潮流である。2016年から17年にかけてオーストラリア、日本、韓国、ニュージーランド、台湾、タイの6つの科学館と日本科学未来館が連携して女子中高生に「幸せとは何か」を考えてもらうワークショップを開いたのはその一例だ。

 こうした流れの中、「世界科学館サミット(Science Centre World Summit)2017」が11月15日から3日間、日本科学未来館(東京都江東区)で開催される。テーマは「世界をつなぐー持続可能な未来に向かって」。2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を大きな目標に、「移民や難民の人々に科学や教育をどう提供するのか」や「ジェンダー問題」、「技術革新の基盤作りやパートナーシップのあり方」、「科学技術がもたらすリスクをどのように捉えて将来の危険に備えるか」などを議論するセッションが計画されている。

ベルギーで2014年に開かれた「世界科学館サミット2014」

 「地球の境界(プラネタリー・バウンダリー)」を発表し壊滅的な変化を避けるために人類が生存できる範囲の限界点を知ることの重要性を提示したヨハン・ロックストローム教授(ストックホルム・レジリエンス・センター所長)をはじめ、、英国で主席医務官をつとめ新しい抗菌薬の研究開発や抗生物質の適正使用などを国際社会に働きかけているサリー・デイビス教授、2012年にノーベル医学生理学賞を受けた山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所所長)ら、多様な分野のスピーカーが世界各国から集まる。興味を覚えた方なら、どなたでも参加いただける。参加費は85,000円(10月15日までのWEB事前割引料金)、当日参加費は95,000円、学生は40,000円(1日パスは16,000円)となっている。

 世界中の約3,000の科学館には、年間で計3億1,000万人以上の人が訪れる。科学館どうしが手を取り合うことで可能になることは少なくないように思う。

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