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グリーンインフラとしての「雨庭」を広めよう

都市の水環境を改善し、生物多様性を育む

米山正寛 ナチュラリスト

 「雨庭(あめにわ)」という言葉を聞いたことはあるだろうか。建物の屋根、コンクリートやアスファルトの舗装面などに降った雨を集めて、一時的に蓄えたり地下へ浸透させたりする庭(植栽帯なども含む)を指す。個人の住宅の庭でもよいし、公共的な空間でもかまわない。小さな湿地とも呼べる雨庭を、都市の中へどんどん設置していこうという動きが盛んになりつつある。

京都学園大学の京都太秦キャンパスに設けられた雨庭

京都学園大学の京都太秦キャンパスに設けられた雨庭
 都市に降った雨水を建物で受け止め、タンクなどへ貯留して有効活用するとともに地下水涵養(かんよう)も進めようと雨水利用は、1980年代から東京都墨田区などで先駆的な動きがあった。都市開発が進んで都市型洪水に悩まされる一方、使う水の供給は上流部に建設されたダムに頼るという、いびつな姿を改めようという思いからだ。当時、同区内に建てられた両国国技館には雨水貯留用のタンクが設けられ、トイレの流し水などとして使われるようになった。

洪水緩和、生物多様性保全など七つの利点

 そうした取り組みを庭と結びつける動きは、1990年、アメリカのメリーランド州で雨水の管理策として始まったのが最初とされる。雨水が流れ込む下水道の負荷を軽減して、(1)洪水緩和、さらに(2)水質浄化、の効果を狙った。大雨の時には、処理能力を超える水量が下水道に流れ込み、結果的に水質汚染を招く。下水道への流入量を抑えることが、そうした汚染を防ぐことにつながるわけだ。まもなくアメリカのみならず、イギリス、ドイツ、ニュージーランドなどでも雨庭が設けられるようになった。

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