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天文学を広げたい人たちが世界中から福岡に集結

日本で初開催の「世界天文コミュニケーション会議」で感じた日本の強みと弱み

橋本修 群馬県立ぐんま天文台観測普及研究員

53の国・地域から455人が参加

世界天文コミュニケーション会議2018(CAP2018)の全体会議
 「世界天文コミュニケーション会議2018」 (CAP2018 “Communicating Astronomy with the Public 2018 in Fukuoka”)が、2018年3月23日から28日にかけて福岡市科学館で開催された。天文学に関係する多彩な人々が集まり、天文学や宇宙にまつわる一般の人々へのアウトリーチや教育、その他の交流について様々な活動や事例の報告をもとに議論を行い、さらなる発展を目指そうとするものである。天文学の学術共同体である国際天文連合(IAU)が主体となって開催するもので、2005年に始まり、今回で 7回目だ。

 日本で開催されるのは初めてで、日本の国立天文台と福岡市がIAUとともに主催者となった。共催には、総合研究大学院大学、日本天文学会、天文教育普及研究会、日本プラネタリウム協議会、日本公開天文台協会、日本天文愛好者連絡会が名を連ね、我が国における関係者の多くが主体的にかかわっている。53にのぼる国や地域から455人の参加があり、その内200人ほどが日本国内からの参加者だった。

日本の天文学普及活動の環境は充実している

会場となった福岡市科学館=撮影はいずれも筆者
 筆者は世界最大級の公開天文台である群馬県立ぐんま天文台の職員として、そこでの活動の一端を報告するために出席した。我が国には世界で最も多くの公開天文台がある。しかも、ぐんま天文台のような口径1mを越える大型望遠鏡が一般の人々に公開されている国は日本だけである。プラネタリウムの数も世界第2位、天文学者の数第3位と、我が国での天文学の教育や普及に向けた環境は極めて充実している。それらを活用した活動にも素晴らしいものがある。ただ、このような国際会議を通じて見ると、活動の多くが国内で閉じていて、国際的な交流という視点ではやや孤立しているのではないかとも感じた。会議の様子を紹介したい。

 今回の会議の特徴のひとつは、一般的な講演やポスター発表に加え、参加者が様々な活動を実際に体験したり、作業を行うことによって主体的に参加したりできるワークショップと呼ばれるプログラムが数多く実施されたことである。海外にある大型望遠鏡を遠隔で実際に動かす。特定の課題についてチームで討論し具体的な行動計画を策定してみる。こうした様々なワークショップが実施された。

アジア、アフリカでも活発になるアウトリーチ

会場で記念撮影をするタイからの参加者たち
 あまりに多彩なので個別の内容の詳細を示すことはできないが、会議全体を貫く雰囲気として、天文学に関する一般へのアウトリーチや教育活動が世界各地で益々活発になってきていることがとても印象的である。特に、アジア地域での発展は著しく、この20年ほどの間に、天文台をはじめとする各種の設備や組織が飛躍的に整備され、様々な活動が活発に実施されている。この会議への参加者も非常に多い。彼らの発展に日本の天文関係者による貢献が小さくないことはよく知られており、国際的な交流や協力の確かな成果を見ることができたのは一人の関係者として嬉しいことだった。

 アフリカなどの物質的にはまだまだ恵まれていない国々でも、

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