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世界自然遺産の登録に向けた仕切り直しの前に

奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島が、先進事例のガラパゴスに学ぶべきこと

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 菅義偉官房長官は、11月2日午前の記者会見で、2020年の世界自然遺産候補として「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦することを決めたと発表した。来年2月1日までに推薦書を提出することとなる。

 本件は、2017年2月に環境省が正式に推薦したものの今年5月にユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)から登録延期の勧告を受けていたもので、今回の推薦は仕切り直しの再推薦となる。今までの経緯、そして予想される今後の展開は次表のようになる。

 ■世界自然遺産登録までの流れ
 2017年2月 ユネスコ世界遺産センターへ推薦書提出
  18年5月 IUCNから登録延期勧告
    6月 取り下げを閣議了解
    11月 推薦書の再提出を決定
  19年2月 閣議了解を経て、推薦書を再提出
   夏〜秋 IUCNによる現地調査と評価
  20年5月 IUCNによる評価結果の勧告
   夏ごろ 第44回世界遺産委員会で最終審査、登録へ

 地元では、登録に向け期待と不安の双方が高まっている。こうした中で改めて確認すべきことは、世界遺産登録はそれ自体がゴールではなく、拙速な登録は沖縄のためにならないということである。沖縄の素晴らしい自然の保全や人々の暮らしにとって何が最善なのかという原点に立ち返って見ていくことが重要だ。

なぜ仕切り直しとなったのか

 仕切り直し(登録延期)となった最大の理由は、米軍北部訓練場跡地を世界遺産登録後に対象地域に組み込もうとした手順だった。米軍は北部訓練場の過半(4010ヘクタール)を2016年12月22日に返還したが、環境省は返還跡地を世界遺産の対象地域に含めずに2017年2月の推薦を行った。返還跡地をやんばる国立公園(2016年9月15日国立公園指定)にまず編入し(2018年6月に編入)、しかる後に世界遺産対象地域に組み込む考えだったのである。

西表島に設置されているイリオモテヤマネコの注意標識=2018年4月、小宮路勝撮影
 このこともあって2017年2月の推薦時には飛び地が非常に多く、世界自然遺産推薦地域の東側には緩衝地帯が全く設定されていなかったのだ(WEBRONZA「やんばる世界自然遺産が問う『日米政府の矛盾』」)。環境省は跡地を推薦範囲に編入し、飛び地を解消するとともに、24カ所の推薦地を5カ所に絞り込む方向で調整中である。

 だがIUCNが指摘した問題はそれだけではない。希少種の保護対策が不十分だというのである。本年11月27日、環境省と竹富町は国の特別天然記念物イリオモテヤマネコの交通事故が今年7件に上り、過去最悪だった2016年に並んだとして非常事態宣言を発令した。

 西表島で自然保護活動を続けている人たちは、「今のままでは

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