豊かな自然環境と持続的な暮らしを活かしたエコツーリズムの展開を目指す
2018年12月31日
鈴鹿山脈に対して、個人的にはこれまで「日本の自然100選」に貴重な群落が選定されているオオイタヤメイゲツ、日本で初めて集中観察が実施されたイヌワシなど、豊かな自然環境の面から関心を抱いていた。そんな私が改めて鈴鹿に興味を感じたきっかけは、山脈西側の大半を占める滋賀県東近江市が市内の山から「鈴鹿10座」を選定し、それらの山々とそこに根づく持続的な暮らしを活かした地域おこしに取り組み始めたからだ。
鈴鹿10座は、1市6町の合併で誕生した東近江市が2015年に市制10周年を記念して、①市内から登ることができる、②鈴鹿山脈の北部、中部、南部で異なる地質や植生の特徴を表す、③古くから人々の生活に関わりが深い、④市内を琵琶湖まで流れる愛知川の源流域にある、といった条件に当てはまる山から選んだ。
鈴鹿山脈の滋賀県側は鉄道やバスによる登山口へのアクセスが悪く、登山口から山頂までのアプローチも長い。湯の山温泉(三重県菰野町)からロープウェーで比較的簡単に登れる御在所岳に代表されるように、多くの登山者は三重県側から登ってくる。東近江市が2017年の春に登山口(駐車場)で実施した調査の結果によると、鈴鹿10座に登る人の約8割は三重県側から入山しており、滋賀県側からは約2割にすぎなかった。車のナンバープレートから推定した登山者の居住地は愛知県が最も多く、続いて三重県、滋賀県、岐阜県で、大阪府など京阪神地方はわずか。これまでの鈴鹿は中京圏の山であり、滋賀県が位置する関西圏の山とは言いづらい状況にあった。鈴鹿では、10座のうちの藤原岳、竜ケ岳、釈迦ケ岳、御在所岳、雨乞岳に、鎌ケ岳(かまがたけ、1161m)と入道ケ岳(にゅうどうがたけ、906m)が加わった「鈴鹿セブンマウンテン」と呼ばれる山々を対象に、1999年度までの34年間にわたり、登山大会が開かれていた。これも中京圏からの集客に目を向けた取り組みだったようだ。
そこで、鈴鹿10座の活用を本格化するにあたり、東近江市では2017年9~11月にエコツーリズムガイド養成講座を開講し、30代から70代まで18人の受講者を同市エコツーリズム推進協議会がガイドに認定した。2018年春には、これらのガイドによる鈴鹿10座エコツアーガイドクラブが発足。同クラブが請け負う形で、登山道の整備や登山ツアーの実施、国道421号沿いの「道の駅 奥永源寺渓流の里」に設けたビジターセンターの運営などが始まった。
こうした動きに弾みをつけようと、鈴鹿国定公園の指定からちょうど50周年となった18年、「山の日」の8月11日に市内の永源寺コミュニティセンター開かれたシンポジウムでは、小椋正清・東近江市長が「鈴鹿の山々の魅力を再認識し、次世代に引き継ぐことを目指したい」などと挨拶。「鈴鹿10座の魅力とエコツーリズムの展開」がテーマのパネル討論には、4人のパネリストが登壇した。
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