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やんばる国立公園に残る米軍の「やばいごみ」

想起させるプエルトリコ・ビエケス射爆撃場と鳥島の劣化ウラン弾汚染

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 沖縄本島北部に位置するやんばる3村(国頭村、大宜味村、東村)と、その周辺海域を区域とする「やんばる国立公園」は、34ある日本の国立公園のうち33番目に指定された国立公園で(34番目は2017年3月7日に指定された奄美群島国立公園)、亜熱帯照葉樹林に世界でここにしかいないノグチゲラ、ヤンバルクイナ、ヤンバルテナガコガネなどが生息している。

 指定は2016年9月15日になされたが、米軍北部訓練場の一部が同年12月22日に返還されたため、返還地のうち約3700ヘクタールが2018年6月29日に国立公園区域に編入された。

沖縄本島北部に広がる「やんばるの森」。手前は米軍北部訓練場=2018年4月19日、沖縄県、朝日新聞社機から、堀英治撮影沖縄本島北部に広がる「やんばるの森」。手前は米軍北部訓練場=2018年4月19日、沖縄県、朝日新聞社機から、堀英治撮影

 その際に環境省は、編入地の浄化作業は終了したと宣言した。

 ところがその返還地で米軍のものとみられる未使用の訓練弾やタイヤ、プロペラなど多数の廃棄物が見つかったことは、昨年2月14日付の「汚されたまま返還される米軍基地」で既に報じたところである。チョウ類研究者の宮城秋乃さんが国頭村安田(あだ)の山中を散策している際に発見したものであった。その宮城さんが、安田山中のLZ-FBJヘリパッド跡周辺でまたしても米軍の未使用の空包銃弾71発を本年4月6日に発見したことが5月3日付の琉球新報で報じられている。

 公園に編入された返還地は広大であり、その浄化が容易でないことは明らかだ。しかし浄化作業の重点対象となるはずのヘリパッド跡から米軍廃棄物が発見されたことは、いかに環境省の浄化作業がずさんであるかを物語っている。今回の琉球新報の記事を見て思い浮かんだのは、カリブ海の米領プエルトリコにあったビエケス射爆撃場の現在の姿であった。

野生生物保護区となったビエケス射爆撃場

 ビエケスは、米領プエルトリコ本島の東側に位置する面積150平方キロほどの小島である。1940年代以来、米国海軍は島民から接収したビエケス島の4分の3を射爆撃場として使用し続け、そのため島はナパーム弾などの不発弾や様々な廃棄物によって高度に汚染された。

米海軍実弾射爆場での誤爆事件を発端とする反基地運動の集会=1999年8月4日、ビエケス島、大野明撮影
 島民による粘り強い反基地闘争は、1999年の誤爆による民間警備員の死を契機に大きく盛り上がり、2003年5月1日ついに米国海軍は射爆撃場としての使用を中止した。しかし不発弾の処理や環境浄化はほとんど進んでおらず、10年後の2013年時点でも処理された不発弾はわずか5%に過ぎない。住民多数に重金属その他の有害物質の体内蓄積が報告され、がん発生率も異常な高率のままである。

 そしてかつての射爆撃場は、国防総省から内務省に移管され、多数の不発弾や「誤射」された劣化ウラン弾を抱えたまま野生生物保護区となったのである。やんばるの北部訓練場返還地がたどっている道は

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