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高知の山奥の生徒が米国名門大生とサマーキャンプ

人口3,600人の梼原町が取り組んだ挑戦的な英語合宿は大成功

安藤崇敬 高知県梼原町一貫教育支援センター長

 高知県梼原町は、県の西北部にある山間部の町である。愛称は「雲の上の町」で、2017年4月30日時点で3640人しか町民がおらず、学校は、小・中・高校がそれぞれ一校ずつしかない。高知空港からは車で2時間程度かかる。そんな小さな町が未来を創る教育の一環として、米国カリフォルニア州の名門大学の学生10人を招いて地元の中高生38人と一緒に2泊3⽇のイングリッシュ・サマー・キャンプを実施した。

 私は2018年に梼原町教育委員会一貫教育支援センター(「0歳から18歳まで、18年間で梼原人を育てる」をモットーとするセンター)所長に就任し、この合宿を企画した。そして、子どもの3日間の変化を実感できたことに大きな手ごたえを感じた。人口減少に立ち向かう自治体こそ、グローカル人材を育てる教育が今後ますます必要になるだろう。今回の梼原町の取り組みを多くの方に知っていただきたいと思う。

キャンプ最終日の全体写真。左端が吉田町長、右端の袴姿が筆者

英語の合宿に最初は元気がなかった中高生

 2019年8月3日から5日までの3日間、梼原町の廃校校舎で、梼原町立梼原学園の中学生28人、県立梼原高校生10人と、カリフォルニア大学(UC)バークレー校、同ロサンゼルス校、同デービス校の学生10人(スタッフを含めて14人)が参加するイングリッシュ・サマー・キャンプが開催された。

 集合時は晴天の青空に恵まれたが、参加した生徒は元気がないように見えた。ほとんど英語を話せない生徒、親に言われて参加しただけだという生徒もいて、不安や不満があったのかもしれない。しかし3日目の成果発表を終えた生徒一人一人の顔は一変していた。誰もが笑顔にあふれ、会場の至るところで3日間を共にした海外学生と握手したり、抱き合ったり、写真を撮ったりする姿があった。やり遂げたからこそ湧き出てくる感動の涙にくれる生徒もいて、彼ら彼女らの自分の「内」から何か変わったことを感じさせてくれた。

大きな声で英文を朗読して、自信を付ける課題に取り組む

 今回のキャンプの副題は「Take a step forward ~未来は、自分への挑戦~」である。自分の「才能」に気づき、自分の「アイデンティティ」を知る機会としてキャンプを企画した。

 もちろん合宿中は英語で話す、聞くことになるが、英語はあくまでも手段である。

「自分の“才能”(強み、特徴)とは何か?」
「自分の“アイデンティティ”(価値観、判断軸)は何か?」

を自分に問いかけ、精査し、相手に伝える。その手段としての英語にこだわった。

同じ集団で育った子どもたちに「本当の」自分を見つめ直させる

 なぜ日本語ではなく、普段、自分たちが使わない英語で聞き、考え、話すことを求めるのか。

 それは、

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