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高校現場から見た英語民間試験と大学入試改革

混乱続きで「延期」に安堵、国語・数学の記述式問題もぜひ見直しを

篠原秀雄 埼玉県立草加東高等学校教諭

英語民間試験の導入見送りを発表した萩生田光一文部科学相=2019年11月1日午前、東京・霞が関、山本裕之撮影

延期に「怒り」と「安堵」

 大学入試英語成績提供システムによる共通IDの申請がスタートするはずだった2019年11月1日の朝、驚きのニュースが飛び込んできた。前日あたりから萩生田文科相の発言のトーンが変化し始めていたので、見直しがありそうだとは感じていたが、ここで「延期」とはあまりに急な方向転換であった。

 私は埼玉県の県立高校で物理を教えるとともに、進路指導主事を務めている。勤務校は進路多様校で、就職する生徒もいる一方で大学進学者も全体の4割ほどいる。この時点では当然、大学進学を目指す生徒たちの共通ID申請に向けた準備はほぼ完了しており、あとは確認・梱包・発送するだけの段階にあった。そして、もちろん、ここに至るまでには膨大な手間と時間を費やしてきた。

使用されずに残った書類の山

 英語の検定試験に関する様々な情報を収集し、複雑なシステム全体をまずは我々が理解し、その上でどの検定を生徒に勧めるかを判断し、対応するための校内における指導体制をいかにつくるか、そして全体から詳細まで保護者にどう説明するか。そういった多くの困難な課題に直面しつつ、具体的な情報が著しく不足している中、まさに手探りで準備を進めてきたのである。

 それだけに、さあ申請、というまさにそのときになっての延期発表には、正直、怒りの感情も沸いてきた。しかし、その上でもやはり「見送りとなってよかった」という安堵の気持ちの方が大きいのである。

 その詳細は後述するとして、重要なのは延期だけでは問題は解決しないことである。一連の大混乱の根源は「英語の4技能すべてを数十万人が受験する共通テストにおいて評価する」ことにあり、そこを変えることこそ必要なのである。さらに、英語だけではなく、国語・数学で導入予定の記述式問題についても同様の問題点がある。これらも英語と同様に見直してほしいというのが、高校現場からの切なる願いである。

これまでの学校現場の混乱と戸惑い

 英語民間試験の導入が学校に与えた混乱は数多くあるが、もっとも早い段階で現れたのが、

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