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国連75周年で高校生が現在と将来の課題を考えた

世界各地で開かれた対話イベント、日本での成果は

細田満和子 星槎大学大学院教授

国連設立75周年の記念会合に集った各国の代表団。新型コロナウイルスの感染防止のため、出席は各国1人に限られた=2020年9月21日、米ニューヨークの国連本部、国連提供

国連創設75周年で世界に実施が呼びかけられた対話集会

 国際連合が創設75周年を迎えた今年、9月に開かれた国連総会の一般討論のテーマは、「私たちが望む未来、私たちが必要とする国連:マルチラテラリズムに対する私たちの集団的なコミットメントの再確認-実効的な多国間行動を通じてCOVID-19に立ち向かう」でした。マルチラテラリズムは多角的・多面的ということですから、新型コロナウイルスの状況下において、さまざまな側面から国際的に協力しながら問題解決しようという意志確認が目的であると理解できます。これは諸問題に統合的に対応していこうとするSDGs(持続可能な開発目標)の精神を表していると捉えられます。

 一方、国連75周年の記念イベントとして、「対話集会(UN75 dialogues)」の実施が世界中に呼びかけられました。これは地域、学校、組織などが、それぞれの希望、そして不安をも共有して、現在と将来のリスクや打開策を話し合う場を、自ら企画・運営・実施し、その結果を国連に報告するというものです。筆者が代表理事を務める一般社団法人インクルーシブ・アクション・フォー・オール(IAFA)がこの対話集会を高校生対象にオンラインで開きました。参加人数は16人と限られていましたが、中身の濃い議論ができ、未来に希望を感じることができたのでご紹介したいと思います。

インクルーシブ・アクション・フォー・オール(IAFA)とは

 IAFAは、2020年2月に設立され、アーティスト、研究者、会社員、主婦、弁護士、医師など多様な仲間が参加しています。母体は、英語の絵本を寄付して頂き世界のニーズある子ども達に送るプロジェクトですが、海外の社会問題に取り組んでいる若者を「IAFAフェロー」に任命して応援したり、日本の若い人たちに世界の問題を身近に感じて将来に役立ててもらう活動をしたりしています。

 IAFA海外フェローは、現在4名います。ケニアのスラム地区キベラで障がいのある子もない子も共に学ぶ場を作り、障がい児の母親や女性のエンパワメントにも取り組むマリア、バングラデシュのコックスバザールのロヒンギャ難民キャンプで難民支援をしているタジン、パキスタンのカラチで障がい者の経済的自立のためにITの会社を起業したアディール、ニューヨークで黒人特有の遺伝病である鎌形赤血球症の子どもたちの学習支援をしているミドリです。

左から、マリア、タジン、アディール、ミドリ=インクルーシブ・アクション・フォー・オールのホームページから

 「UN75グローバル・カンバセーション」は、IAFAの活動の一環として、8月にオンラインで開いた高校生を対象とした3回シリーズの日本語による対話イベントです。コロナ禍だからこそ、平和、平等、環境等について、話し合いのプラットフォームを創っていこうと思ったのです。

日本、アメリカ、イギリスから集まった16人の高校生

 参加者を一般公募した結果、日本、アメリカ、イギリスの高校に通う16人の高校生が集まり、2020年8月1日に第1回を開催しました。当日は、ケニア、バングラデシュ、パキスタンでのフェローたちの活動を映像化して字幕を付けて高校生たちに見てもらい、問題解決のためにどのように取り組んでいけるかとクリティカルに考えてもらう場づくりをしました。

 2回目は

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