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化学賞は「次世代シーケンサー」と読む

DNAの塩基配列を超高速で読み取る道具は文句なしに画期的

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 予想が難しいと定評のある化学賞で、2019年はリチウムイオン電池、2020年はゲノム編集と、大本命の「わかりやすい」受賞が続いた。2021年は再び「わかりにくい」路線に戻るのだろうか。ここは引き続き「わかりやすい」受賞になると予想する。何のことはない、そう仮定しないと「予想は無理」の世界に舞い戻って、この記事も書けなくなってしまうからである。

3年連続「わかりやすい」路線なら、次世代シーケンサー

大阪大微生物病研究所にある次世代シーケンサー=2021年4月
 で、今年のノーベル化学賞が「わかりやすい」路線とすれば、ずばり、次世代シーケンサーが受賞するだろう。シーケンサーはDNAのA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4種類の塩基の配列を読み取る機械だ。塩基配列は「生命の設計図」とも呼ばれ、これを読み取ることによって進化の謎や病気の謎のあれこれが解かれてきたのはご存じの通りである。そして、これからもDNAの配列読み取りの利用がどんどん広がっていくのは確実だ。

 かつては塩基配列を読み取ろうとすると大変な時間とお金がかかった。それが「次世代」の装置が開発されて年々スピードアップと同時にコストダウンが進み、医学をはじめとする生命科学に革命をもたらしているのだ。新型コロナウイルスの変異をいち早く追跡できるのも、次世代シーケンサーのお陰である。

ミレニアム技術賞とブレークスルー賞が相次いで授賞

 次世代シーケンサーの意義の大きさは生命科学者であればだれもが認めるところである。ところが、この装置には異なる人が開発した複数の技術が使われており、誰を開発者とすべきなのかの判定は簡単ではなかった。そこに決着をつけたといえるのが、フィンランドが出すミレニアム技術賞とグーグルやフェースブックの創設者ら起業家がつくったアメリカのブレークスルー賞だ。

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