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続「雑草対策が大変なモンスーンの日本では有機農業は難しい」は、本当か。

有機農業の市場はアジアでも拡大している。日本は遅れを取るのか

香坂玲 名古屋大学大学院教授、日本学術会議連携会員(環境学)

日本にとって重要な欧州の取り組み

 有機農業の定義は、EUでは生態系や生物多様性との関係性、動物の福祉への言及があるなど、日欧において違いがあるが、共通して有機農業とは、端的に言うと、環境への低負荷の農業である。制度としては、基本的に、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、遺伝子組み換え技術を利用しない農業を示す。

 輸出入品であっても、整合性があり、基準を満たしていれば認められることもある。従って有機と謳(うた)っている産品が国産とは限らない。例えば、大豆を使った食品や飲料などの有機産品の原材料をみると、必ずしも国産ではないこともある。既にグローバルなサプライチェーンに関係していることに気づかされる。

900年の歴史があるマリア・ラーハ修道院近くのオーガニックショップに並ぶ有機野菜=2019年11月、ドイツ・ラインラント=プファルツ州、筆者撮影900年の歴史があるマリア・ラーハ修道院近くのオーガニックショップに並ぶ有機野菜=2019年11月、ドイツ・ラインラント=プファルツ州、筆者撮影
 過去の自由貿易協定の議論のなかで、日本と欧州は、農産物輸出国である米国などの国々に対して共同戦線を張ろう、と模索した時期がある。生産と支援を切り離すデカップリングの考え、農業の多面的機能などといった用語も登場する契機となった。

 日本は、欧州とは所得補償などで異なるアプローチを取るものの、規模、環境面での配慮、域内(日本の場合は国内)産品の抱える事情は、米国、豪州、南米の国々との比較よりは意義があり、実際に欧州の分析は活発に行われてきた。

 欧州との比較が盛んになりがちなのは、環境条約における米国の姿勢が関係している。

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