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科学を元気にするJAASの挑戦

対話し協働する新しいコミュニティーが出発した

北原秀治 東京女子医科大学特任准教授(先端工学外科学)

 日本科学振興協会(Japanese Association for the Advancement of Science:JAAS)が設立され、第1回総会とキックオフイベントが6月18日から24日まで開かれた。科学に関わるあらゆる人々を対象に、科学の振興に関する事業を行い、人類の福祉向上および持続可能な社会の実現に寄与することを目的とする特定非営利活動法人だ(設立趣意書より)。

日本科学振興協会の総会とキックオフイベントが6月18〜24日に開かれた
 筆者は今年2月、このキックオフイベントの実行委員長に就任した。開催までの4カ月間、たくさんの方々にサポートされ叱咤激励を受けながら準備を進めてきた。そして6日間のイベント期間を通じて、産・官・学・民・メディアの様々な方々が集い、会の目標である「日本の科学を、もっと元気に」する方法をさぐり、参加者の皆様と対話することができた。

 安心して寄り添える科学者コミュニティーの構築は、筆者が取り組んできた活動でもある。JAASの歩みを振り返る。

米国AAASに範を取って

 JAASが法人として設立したとほぼ同時に、キックオフイベントを開催することが2022年2月に決定した。NPO法人としての総会も合わせることになり、準備を急ピッチで進めなくてはならなくなった。

 イベント開催はJAASの前身である「日本版AAAS設立準備委員会」の頃から動きはあった。AAASはアメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science)の略称である。世界最大級の学術団体として知られ、科学誌『サイエンス』の出版元としても有名なAAASに範を取り、JAASの動きはスタートした。

 ただ、法人設立が先行し、メンバーの入れ替えなどもあり、イベントの準備は一向に進まなかった。前年度の実績などがない企画をゼロから作り上げるのは、容易ではない。予算を始め、参加人数の予測、会場決め、日程やプログラムを編成するなど、作業は膨大にある。しかもコロナ禍が重なっていることも考慮すると、どのような着地ができるのか全く予想がつかなかった。

 どこからも後ろ盾がない民間団体に、誰が注目するだろうか? しかしそんな不安をよそに、本当にたくさんの方々からのご祝辞及びビデオメッセージでの激励のお言葉をいただいた。JAASに期待してくださる方々の重みを感じながら、JAAS会員が感じる「科学に関する危機感」を共有していただいていることを実感した。

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