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生きとし生けるものとの調和を結ぶ学舎は日本にも必要だ

英国の小さな大学院大学「シューマッハー・カレッジ」で学んだこと 下

宮﨑紗矢香 人間活動家

 その日の午後は、オール・ビーガン・メニューのランチを挟み、ディープタイムウォークと呼ばれるアクティビティーに出かけた。

ステファン・ハーディング教授ステファン・ハーディング教授
 開発者のステファン・ハーディングは、加齢による体調不良で直前まで講義出席を逡巡(しゅんじゅん)していたそうだが、日本の参加者に向けて特別にGoサインを出してくれた。

 ディープタイムウォークでは、地球46億年の歴史を4.6kmに置きかえ、雄大な自然を歩く。

 1メートルは100万年、1ミリは1000年、1歩(50センチ)は50万年というカウントでハイキングし、その過程で地球にどんな生命が誕生したのか、私たちの祖先が命の連鎖を育んできた歴史をたどっていく。

 3~4時間に及ぶ長距離を歩いた末、ようやく着いた最終地点で、最後の0.3ミリにも満たない歩数が産業革命から現在に至るまでの時間だと知らされる。人間という種がこの地球を破壊し始めてしまった、その取り返しのつかない責任への意識。ショック(と疲れ)で参加者が沈黙する中、私たちに何ができるのか、ステファンは告げた。

ディープタイムウォークにてディープタイムウォークにて
 「この地球の途方もない歴史に思いをはせ、心からの感謝をすること。母なる地球であるガイアのために、私たちを含めたガイアを生きる全ての生き物のために、愛と平和のために、あなたの人生の中で何ができるか考えてみてほしい。携帯を買うのをやめる? お隣のお庭を手伝ってみる? 小さくても大きくてもいい。ガイアを想像して、自分がしたいと思うことを想像してみて。今日のディープタイムウォークを思い出すことかもしれないし、もしくは実践してみることかもしれない。巡礼の旅をともにわかちあってくれて、本当にありがとう」

身体から発するメッセージ

 ディープエコロジーの専門家が、口先だけで行動を迫るのではなく、自らも身体を動かしてメッセージを投げかけている。そのインパクトは大きく切実なものであった。

 日本でも地球の危機は叫ばれてきたが、果たしてどれだけの人が、概念や理論の範疇(はんちゅう)を超えて、ガイアとのつながりを保てているだろうか。有識者になればなるほど、頭に偏りがちな傾向は強まるように思う。自戒も込めて、常に心で感じることを怠らないようにしたい。

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