高校演劇「春フェス」報告【上】
2022年05月02日
コロナに日常を縛られるようになって2年余り。高校生たちは学校生活の大半を、あるいは入学してからの全ての時間を、制約の中で過ごしています。彼・彼女らの思いが投影される表現の一つである「高校演劇」。そこに見える高校生たちの「現在地」は。全国から選ばれた10校が参加した春季全国高等学校演劇研究大会(通称「春フェス」、2022年3月に大阪で開催)を通して、劇作家の工藤千夏さんが見つめました。
春フェス大阪大会で上演された作品を語る前に、2021年度の高校演劇を振り返りたい。
学校生活において密を回避するための取り組み(短縮授業、分散登校)が必要な状況下、部活動は当然のごとく規制の対象となる。2020年3月の全国一斉休校のような大なたぶるいとは異なる、別の理不尽さを感じざるを得ないケースも多かった。
高校生のための感染防止対策は地域によって発令元も内容が違うため、コンクール、フェスティバル、講習会、自主公演が実施か中止か、延期か、どのようなやり方なら実施可能か、それぞれ異なる状況が生まれてきた1年であった。
多くの公立高校では、部活動は原則禁止、あるいは週3回までならオーケー等の制限と解除が繰り返されてきた。コンクール(運動部の場合は公式試合など)も「原則禁止」「慎重な判断の上参加可能」「上位大会につながる県大会への参加や大会前の活動は、一部制限しながら実施可能」……と、感染者数や病床逼迫度の変化で揺れる。一方、私学は学校長の判断で、制限を設けない学校も多かった。
高校演劇の1年
全国高等学校演劇協議会(高演協)に加盟する約2000校の演劇部は、毎年夏から翌年春にかけて、地区大会 → 都道府県大会 → ブロック大会(全国8ブロック)と選考を重ね、夏に「全国高等学校総合文化祭(総文)」の一環として開催される全国大会を目指す。夏の全国大会の他に、各ブロック大会で選ばれた学校などが参加する「春フェス」が毎年3月に開催される。高校野球でいうとセンバツのような位置づけだ(ただし、春と夏両方への出場はない)。
工藤千夏さんによる昨年の「春フェス」レポート 【1】【2】【3】
2021年度の地区大会、県大会、ブロック大会の多くは、関係者のみ観劇可能なクローズド上演であった。出場校が他校の上演を観劇できる地域もあれば、観劇できない地域もあった。
もっとも厳しい判断が下された埼玉県は、地区大会、県大会ともに映像審査となった。そのため年度末に、総勢14人の審査員がのべ75作品について書いた講評集を制作、配布した。記録だけでなく、開けなかった講習の代替になるようにとの願いが込められていた。
感染の第6波が来ていた2022年2月に予定されていた各都道府県の演劇連盟主催の講習会、冬季大会の多くは中止、あるいは、3月に延期された。しかし、延期したものの、部活動の禁止が解けず、結局中止になる例も頻発した。
たとえば、山梨県の場合。2月末に県外に発令された「まん延防止等重点措置」に対応する形で公立高校に分散登校・部活停止が指示された。このため稽古が一切できず、3月末に開催予定だった、2009年から続く「山梨オープン小演劇祭(高校演劇ライト級大会)」(甲府南高校フロンティアホール)は中止を余儀なくされた。
12月開催予定だった高校演劇サミット(こまばアゴラ劇場)も募集を断念。恒例だった高校演劇れんが祭(前橋市芸術文化れんが蔵)や高校演劇見本市(渡辺源四郎商店しんまち本店・青森市)は、企画の発表にも至らなかった。
上演ができるか、上演できないか、ゼロ100で明暗が分かれる。誰が悪いわけでもない。ただ、そこにコロナの風が吹き続けている。
2022年3月19日、大阪府富田林市・すばるホールで第16回春季全国高等学校演劇研究大会フェスティバル、通称「春フェス」が幕を開け、21日、無事に終了した。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください