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『こまねこ』パイロット新作が世界配信(下)

「世界の子供たちの笑顔のもとになる作品を届けたい」 合田経郎氏に聞く

叶精二 映像研究家、早稲田大学・亜細亜大学・東京工学院講師

 去る6月17日、新作人形アニメーション『The Curious Kitty & Friends(原題)』のAmazon プライム・ビデオ パイロットシーズンでの世界配信が開始された。これから4週間の反響でシリーズ化の是非が決まる。応援の気持ちを込めて、前回の松本紀子プロデューサーに続き、合田経郎監督に作品への思いを伺った。

『こまねこ』パイロット新作が世界配信(上)――「日本独特のコマ撮りアニメーションが世界で支持されて欲しい」 松本紀子氏に聞く

合田経郎(ごうだ つねお)
TYO「ドワーフ」代表・アニメーション作家。1987年、日本映画学校卒業後、1990年まで電通プロックス(当時)に在籍。以後、6年間のフリーランスを経て、1996年にTYO入社、企画演出部に所属。2003年、ドワーフを創設し代表に就任、アニメーション作家へと転身。「どーもくん」「こまねこ」などコマ撮りによる人形アニメーション作品を制作する傍ら、イラストレーション、絵本の執筆など創作活動は多岐に渡る。

新キャラクター「くまのミミちゃん」(左)とこまちゃん(右)拡大新キャラクター「くまのミミちゃん」(左)とこまちゃん(右)=The Curious Kitty & Friends episode #CUKI 101(c)2016 Amazon.com,Inc. or its affiliates All Rights Reserved (c)TYO/dwarf・Komaneko Film Partners

日本のコマ撮りのために、これをやらないわけにはいかない

――『こまねこ』の生みの親である合田監督に伺います。本作制作中の心中はいかがだったのでしょうか。

合田経郎 出発点から「シナリオは別の人」「デザインも現行のものではアメリカの子供たちには地味すぎる」といった意見が出されていると聞いていました。企画をポジティブに受け止めた上で、自分たちはアメリカ側の児童対象作品特有の制約や「こうすれば受け入れられる」という制作法は全く未知の世界ですから、先方のプロデューサーの肌感覚を信じようと思いました。

合田 経郎 監督拡大合田経郎監督
 当初は「自分でやらない方がいいだろう」と思っていました。「自分がやると激しく葛藤することになるだろう。別な人に任せた方が思い切ってパワフルなものが出来るのではないか」と。

 しかし、準備期間の問題など諸事情ありまして、ぼくが監督をすることになりました。

 もちろん葛藤はありました。こまねこを「好きだ」と言って下さる方々とたくさん出会っていましたし、自分でも深い愛着のある作品です。それを自分の手で壊すのは厳しいことでして、こんな残酷なことはあるだろうか……と悩んだこともありました。

 しかし、そこで投げ出してしまっていいのかと考えた時に、「自分は何のために日本でコマ撮りをやっているんだ」という自問自答をすることで、原点に立ち返りました。

 もしかすると、『ひつじのショーン』(※)や『ピングー』(※)のように、世界の子供たちに愛されるコマ撮りコンテンツを日本で作れる千載一遇のチャンスかも知れない。

 だったら、これをやらないわけにはいかないと、歯を食いしばって取り組みました。アメリカ側のリクエストの向こう側に、アメリカの子供たちの笑顔が広がっているんだと考えるようにしました。

※『ひつじのショーン』公式サイト
※『ピングー』公式サイト

 いざやってみると苦しいばかりではなくて、新しい発見や面白いこともたくさんありまして、何も悔いはないです。

――素晴らしい決意と志ですね。日本のアニメーションにとって大きな一歩を刻んだと言える企画だと思います。具体的にはどのような制作過程で、どんな発見があったのでしょうか。

合田 最初からメインキャラクターが揃っていて、そこに新しいキャラクターである「くまのミミちゃん」が登場するといった基本のシナリオが送られて来まして、こちらで検討して追加点などを討議していきました。

ドライバーと修理キットを持ち歩く男の子ラジボー(左)と、いつもハンディカムを持ち歩く主人公こまちゃん(右拡大ドライバーと修理キットを持ち歩く男の子ラジボー(左)と、いつもハンディカムを持ち歩く主人公こまちゃん(右)=The Curious Kitty & Friends episode #CUKI 101(c)2016 Amazon.com,Inc. or its affiliates All Rights Reserved (c)TYO/dwarf・Komaneko Film Partners
 次にざっくりとした各シーンのラフなスケッチを描きました。

 それをアメリカのストーリーボードライターが具体的な絵コンテに起こします。カットの繋ぎ、カット割、カメラワークなどもここでほぼ決まります。

 今回のカットの特徴として、いつもの自分の作品より長回しで引きの画が多いことが挙げられます。

 先方から「ワンシーン・ワンカットくらいのつもりで。カメラはなるべく寄せるな」という指示がありました。

――寄りの画が多いのは日本のアニメーション全体に顕著な傾向で、全体状況でなくキャラクターの心理に寄り添った主観型の演出に長じていますね。短いカットをハイテンポで刻んだり、寄りのアップを多用すると児童が客観的な位置関係を把握出来ないという判断なのでしょうか。

合田 その通りです。こちらはカメラを寄せて、人形の可愛い表情を見せてあげたいと思うのですが、そうではなく状況全体を捉える感じですね。ただ、「ここだけは!」というカットでは話し合って、寄りも使っています。

 面白かったのは、こちら側で会話のシーンなどにアメリカ風の芝居を意識した大袈裟な身振り手振りを入れてみたところ、「これは ・・・続きを読む
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筆者

叶精二

叶精二(かのう・せいじ) 映像研究家、早稲田大学・亜細亜大学・東京工学院講師

映像研究家。早稲田大学・亜細亜大学・大正大学・東京工学院講師。高畑勲・宮崎駿作品研究所代表。著書に『日本のアニメーションを築いた人々』(若草書房)、『宮崎駿全書』(フィルムアート社)、「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、共著に『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店)など。

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