メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

マルチな星野源は「楽しい地獄」を生き抜く

「ポップ」をめぐる二重の使命と静かな決意表明

太田省一 社会学者

『おげんさんといっしょ』(NHK)拡大星野源が「おかあさん」になった『おげんさんといっしょ』=NHKの公式サイトより
 2017年5月4日に特番『おげんさんといっしょ』(NHK)が生放送された。生演奏あり、フリートークや投稿動画ありと盛りだくさんの音楽バラエティだったが、星野源といういま大きな人気を集める存在を考えるうえでもとても興味深いものだった。

 そういうわけで、いくつかの場面を糸口にして、マルチタレントとしての星野源について考えてみたい。

クレージーキャッツへの敬意

 昭和の典型的な木造家屋を思わせるセット、そしてそこに住む家族という設定で登場する扮装した出演者たち。そのなかで女装して登場した星野源の髪型やスタイルは、セットの印象もあってサザエさんを思わせた。番組タイトルは同じNHKの『おかあさんといっしょ』のパロディ風なので、昭和のおかあさんというところかもしれない。

 私が「おっ」と思ったのは、番組のタイトルコールの場面だった。お父さん役の高畑充希や娘役の藤井隆とともに、「おげんさんといっしょ スタート!」と書かれた手持ちのフリップを見せてコールした場面である。

 どうということもない場面ではある。だがそれがなぜ印象に残ったかというと、その始まり方がかつてハナ肇とクレージーキャッツ(以下、クレージーキャッツと表記)が出演していた『おとなの漫画』(フジテレビ系、 1959年放送開始)という番組とオーバーラップしたからである。その日の時事的な話題を風刺コントで綴るこの番組もまた生放送であり、スタートは同じく出演者が手に持った番組タイトルのフリップをカメラに大きく映し出すスタイルだった。

 星野源のファンであるなら、彼がクレージーキャッツに特別な敬意を抱いていることはよく知る事実だろう。彼の7枚目のシングル『Crazy Crazy』(2014)はそのタイトルの通り、彼らに捧げられたものだ。同曲のMVではクレージーキャッツを彷彿とさせる白いスーツ姿の星野らバンドのメンバーが歌い、演奏する。

マルチタレントの先達、青島幸男への連想

 だが似ているという意味では、私はマルチタレントの先達とも言うべき青島幸男の存在をその場面から連想した。 ・・・続きを読む
(残り:約2765文字/本文:約3706文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)。最新刊は『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)。

太田省一の新着記事

もっと見る