農林族議員の意図が〝消費者の利益〟という衣をまとって実現されようとしている
2016年11月07日
国内で製造されるすべての加工食品に、その主な原材料についての原産国表示が義務づけられることになった。
これまでは、原産地に由来する原料の品質の差異が、加工食品として品質に大きく反映されると一般的に認識されている品目で、製品の原材料のうち、単一の農畜水産物の重量の割合が50%以上である商品に表示が義務づけられていた。これが大幅に拡充されることとなる。
具体的には、乾燥キノコ、緑茶、コンニャクなどの加工度の低い、ほとんど農産物といってもよいような食品が表示の対象だったが、今後はチョコレートやキャンディーなどの加工度の高い食品も対象になる。
原産国表示が要求される原材料は、製品に占める重量割合が最大のものである。例えば、しょうゆや豆腐の場合、大豆が最大の原材料なので、「大豆(アメリカ)、小麦、食塩等」、または「大豆(アメリカ)、凝固剤」となる。
しかし、食品メーカーの原材料の調達先は一国ではなく、さまざまなのが実態である。このため、食品メーカーの負担を考慮して、例外的な場合を規定するという。
しょうゆの原材料である大豆の仕入れ先が、アメリカ、カナダ、国産というようによく変更される時は、「大豆(アメリカ、カナダ、または国産)、小麦、食塩等」と表示してもよい。また、アメリカ、カナダ、ブラジルというように3カ国以上の外国産が使用される場合には、「大豆(輸入)または大豆(輸入または国産)、小麦、食塩等」と表示してもよい。
さらに、中間加工原材料を使用するときには、その製造した国を表示してもよい。トマトケチャップの場合、「トマトピューレ(アメリカ)、糖類等」のようになる。
しかし、豆腐ハンバーグや豆腐ギョーザのように、中間加工原材料として豆腐を使用するときには、豆腐の原料大豆にアメリカ産を使用しても、「豆腐(国産)、豚肉、玉ねぎ、キャベツ等」などと表示できる。
チョコレートの中で最大の原材料が砂糖だったとすれば、砂糖の原料である粗糖(原料はサトウキビ)の主産地がオーストラリアであっても、「砂糖(国産)、全粉乳、ココアバター等」と表示できる。チョコレートムースは「チョコレート(国産)、生クリーム等」となる。
ここにいたると、消費者が本来期待している情報は得られないことになり、何のための原産地表示かわからなくなる。このため、消費者団体からは不十分な表示であり、消費者の利益に反するのではないかという批判がある。
しかし、はたしてそうだろうか?
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