平和博
2010年11月08日
テクノロジー(技術)とイノベーション(革新)は別物だという話を、もう一度思い返しておきたい。それを混同するところから、混乱が始まるようだ。イノベーションを「技術革新」と呼ぶためかもしれない。電子教科書の導入を巡る議論に、そんな印象を持っている。
今年も幕張メッセで開かれたIT見本市「シーテック」で目をひいたものの一つが、グーグルの携帯用基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した多機能端末のオンパレードだ。タブレット型だけ見ても、NTTドコモから11月下旬に投入されるサムスン製の7型「ギャラクシータブ」、シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」10・8型、東芝が欧州で発売する10・1型「フォリオ100」。完成度やコンセプトに違いはあったものの、スタンスははっきりしている。対iPad(アイパッド)(9・7型)戦略だ。
シーテックの後にも、KDDIはサムスン製7型アンドロイドタブレット「SMT―i9100」の来年発売を発表した。NECも7型アンドロイドタブレット「ライフタッチ」を用意する。
アンドロイドを使った機器は、3・5型前後のスマートフォンから、日本でも来年投入が予定されている24型~46型のグーグルTVまで、様々な画面サイズに対応している。対するアップルが、スマートフォンのiPhone(アイフォーン)からアップルTVまでを展開するのとほぼ相似形。
特にスマートフォン、タブレット市場を大きく切り開いて先行するアップルを追うようにして、無料のオープンソースOSであるアンドロイド搭載機器に各社が参入し、市場を広げるのは当然の成り行きと言える。
クラウドと連動したタブレット端末が、情報と端末の生態系を変えつつあることは間違いない。
しかしそれは、少なくとも今はまだ、電子機器とオンラインサービスのカテゴリーの中の話だ。テクノロジーは、そのつかいみちが社会によって発見されることで、社会の「腹に落ちる」。イノベーションと呼ぶべき世の中の変化は、その先の話だろう。
電子教科書の具体的なイメージは定かではないが、少なくとも想定されているのは、アイパッドやアンドロイド端末のようなタブレットだろう。その意味では、基盤となる「画面」はこの数年で急速に整備されていく。
例えば、今ある教科書をPDF化して載せるのなら、今すぐにでもできるだろう。紙代の節約にはなるし、かさばらない。いわゆる「自炊派」の人たちが享受しているメリットは、そのまま享受できる。
だが、そのメリットは、教育現場の優先順位として、どのくらいのものなのだろうか?
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください