「われわれの実力はそんなに高くない」
2015年06月15日
「いきなり、プリニーじゃなかった」
5月29日、口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県屋久島町)で噴火。テレビのニュースは、もくもくと噴煙が上がる様子を繰り返し放映していた。それを横目でみながら、夕刊に載せるコメントを求めて鹿児島大学の井村隆介准教授に電話した。
「映像をみて、わかることを教えてください」。その際、井村さんが口にしたのが、冒頭の発言だ。
プリニーとは、噴火の様式の一つの呼び方で、プリニアン、プリニー式ともいう。火山灰やガスなどからなる噴煙柱を空高く、噴出し、その一部は崩れて火砕流となるようなタイプの噴火だ。噴煙柱の高さは10キロ以上にもなり、火砕流はどの方向に流下するかわからない。
そんなことにならなくて、本当によかったというのが、井村さんの発言意図だった。
今回、勢いよく上がる噴煙柱の映像を最初に見た時に井村さんの頭をかすめたのは、1914年の桜島(鹿児島県)の大正噴火がプリニー式で始まったということだった。口永良部島にも、過去にプリニー式噴火が起こったことを示す火砕流の痕跡が残っているという。
「過去にあったことは将来も起こる可能性がある」という地質学の基本的な考え方によれば、いきなりプリニー式になる可能性もゼロではないと井村さんは知っていた。だから心配した。幸い、今回は、噴煙柱の勢いは次第におさまり、島民は全員無事に避難できた。
口永良部島の噴火は唐突ではなく、年単位の長期的スパンでみれば、地震や火山ガスが増え、本格的な噴火に向かっているとみられ警戒を強めていた。短期的には、気象庁は顕著な前兆をとらえておらず、直前の噴火予知はできなかった。噴火警戒レベルは「火口周辺立ち入り規制」の3のままで、「避難準備」の4は飛ばして、「避難」の5に引き上げられた。レベルが5に引き上げられたのは、2007年の導入以来初めてだ。
「われわれの実力はそんなに高くない」。気象庁の火山噴火予知連絡会会長
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