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クリントン、オバマ擁護演説の意味

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 アメリカの大統領選挙は、共和、民主両党の全国大会が終わったが、これからも11月6日の大統領選挙までの長い選挙戦が続く。これから何が起きるか分からず、どちらの候補が勝つかも分からないのだが、オバマ大統領が勝てば、それは民主党大会でのミシェル・オバマ大統領夫人とクリントン元大統領の演説のおかげだったと後から評価されることになるだろう。どちらも素晴らしいので、日本の政治家には、是非、この2つの演説を研究して欲しい。

 私には、なぜ素晴らしいかという解説を書きたい気分があるが、特にオバマ夫人の演説には、もっと適した解説者が本欄のコメンテイターの中にもおられるだろう。そこでエコノミストとして、クリントン元大統領の演説の主要メッセージについてのみ、それが事実であるかのみを確認したい。

クリントン演説のメッセージは正しいか

 クリントン元大統領は、「共和党の言い分は簡単だ。共和党はめちゃめちゃになったアメリカ経済をオバマに残した。(4年たって)オバマがすばやくきれいにしなかったから、オバマをクビにして共和党に戻せというのだ」と述べた。

 共和党は、オバマ政権の下で景気が悪い、仕事がないというが、そもそも共和党が1930年代の大恐慌に次ぐ大不況をもたらし、オバマはそのために苦労している。苦労しながらも、景気を回復させ、雇用を拡大しているというのがクリントン演説の最大のメッセージである。

 このメッセージが正しいかどうかを考えるために、これまでの不況の、不況からの回復のパターンを比較してみたい。1980年から現在まで4つの不況があった(80年に短い不況があったのだが、これは無視する)。1981年7月から82年11月までの不況、1990年7月から91年3月までの不況、2001年3月から01年11月までの不況、2007年12月から09年6月までの不況の4つの不況である。

 これらの不況からの回復過程で、実質GDP、民間雇用、失業率が不況前のピーク(失業率はボトム)を取り戻すまで何四半期かかっているかを見ることにしたい。雇用のうち民間雇用だけを見るのは、政府が無理やり公共部門で雇用した人数を除外するためであるが、実際には、地方で教員や警察官をレイオフして政府部門の雇用が減っているのも除外している。これらが以下のグラフにある通りである。

 第1の不況(レーガン政権時代)ではGDPが過去のピークに回復するまで7四半期(以下、期と記す。すなわち3か月×7四半期で21か月)、雇用がそうなるまで9期、失業率が過去のボトム以下になるまで11期かかっている。第2の不況(ブッシュ政権時代)では、それぞれ6期、13期、30期かかっている。第3の不況(ブッシュJr.政権時代)では、それぞれ3期、18期かかり、失業率は過去のボトム以下にはならなかった。第4の、すなわち今回の不況(ブッシュJr.‐オバマ政権時代)ではGDPが過去のピークに回復するまで16期かかり、雇用と失業率は過去の好況時のレベルに達していない。

 第1と第2と第3の不況では、GDPが過去のピークを超えるまで、それぞれ7期、6期、3期かかり、雇用が過去のピークを超えるまで9期、13期、18期かかっている。すなわち、雇用が過去のピークに達するまで、GDPが過去のピークに達する期間の約1倍半から6倍もの期間がかっている。今回は、GDPが過去のピークに回復するまで16期もかかったような大不況なのだから、雇用が元に戻るまで16期の2倍で32期かかっても不思議ではない。雇用のピークから現在まですでに19期たっているが、まだピークに421万人も足りない。雇用の底から現在まで、1期当たり41万人しか増えていないから、過去のピークになるまで、後11期かかることになるが、それでも30期でピークに戻る。すなわち、過去の不況と比べて、オバマ大統領の手腕が特に低い訳ではない。

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 しかし、全部で30期といえば7年半年で、

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筆者

原田泰

原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)

 早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。

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