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[18]公道越しにボールを打てますか?(下)

自分の身は自分で守る

山口信吾 ゴルフ作家

公道に接したホールであわや大事故のミスショット

 イングランド東海岸にある「シークロフトGC」の390ヤードの8番パー4は、危険なホールである。ゆるやかに右に曲がるホールのすぐ右側には、車が行き交う公道が延びている。ホールと公道を遮るものは何もない。「車に注意!」とか「ドライバー使用禁止!」などという看板もない。ティーショットを放つタイミングとクラブ選択は、ゴルファーにゆだねられている。

 ティーショットを右へ押し出したり、大きくスライスさせたりすれば、公道を走る車を直撃する可能性がある。公道を避けて左を向いて構えるとアウトサイドインの軌道になって、スライスを打ちやすい。頭の中で警戒信号が点滅。公道を走ってくる車がいないことを確認して、フェアウェイ左端を狙ってドライバーを振った。だが、ボールは右へそれて公道に向かった。あっ、危ない! ボールは道路上で大きく弾んで道路の右手の農地に飛び込んだ。よかった! 安堵の胸をなでおろす。

シークロフトGC7番パー4のグリーン。背後に見えるのは、公道に沿って延びる危険な8番ホール。グリーン右の階段で8番のティーグラウンドに上がる拡大シークロフトGC7番パー4のグリーン。背後に見えるのは、公道に沿って延びる危険な8番ホール。グリーン右の階段で8番のティーグラウンドに上がる

 公道はカーブしているので見通しが利かない。英国の一般道路の制限速度は60マイル(96キロ)なので車の流れは速い。カーブの先から車が急に現れる可能性があった。もし走ってくる車にボールを当てていたら大きな事故になっていたかもしれない、と思うと冷や汗が流れた。この瞬間、「ショットは自己責任で打つ」と心底悟ったのだ。このときまで、恥ずかしながら、ショットの自己責任について真剣に考えたことがなかったことを白状したい。

 距離が長いというだけでドライバーを握ったのは大きな間違いだった。「さあ、危険なホールに挑戦してスリルを楽しんでください。ただし、何が起きても全てあなたの責任ですよ」というコースが発するメッセージの後半部分を読み取れなかったのだ。ロフト角の少ないドライバーを使えばスライスになりやすいことは内心わかっていたのに・・・、という苦い思いがこみ上げてきた。フェアウェイウッドどころか、間違いなく真っすぐ打てるアイアンで打つべきだったのだ。

見るからに右へ打ち出しやすい右ドッグレッグ。車が来ないことを祈りながらドライバーを振った(シークロフトGC8番パー4)拡大見るからに右へ打ち出しやすい右ドッグレッグ。車が来ないことを祈りながらドライバーを振った(シークロフトGC8番パー4)

 「あわや大事故」のミスショットをしでかしてから、遅まきながらラウンドでは常に安全や事故防止を意識するようになった。危険なホールでの大失敗が、ゴルフは自己責任のスポーツであることを教えてくれたのだ。

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筆者

山口信吾

山口信吾(やまぐち・しんご) ゴルフ作家

1943年、台北市生まれ。九州大学工学部建築学科を卒業後、同大学院を修了。69年、竹中工務店に入社。72年に渡米し、ハーバード大学デザイン大学院修了後、米国大手設計事務所に勤務。75年に帰国して竹中工務店に復帰。一貫して都市開発プロジェクトに従事。2004年の定年退職後はゴルフ作家として活動している。43歳でゴルフを始めた遅咲きゴルファー。ベストハンディキャップ8。97年以来、毎年のように英国の海岸地帯の「リンクス」と呼ばれる自然のままのコースを巡る。『定年後はイギリスでリンクスゴルフを愉しもう』(亜紀書房)、『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』(日経ビジネス人文庫)、『死ぬまでゴルフ!』(幻冬舎)など著書多数。自身のブログはhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~single 【2016年3月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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