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自動車メーカー 不正・隠蔽の連鎖

不正の根底にあるのは品質の劣化だ。技術力で負けている実態を冷静に直視しよう

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 この4月、IHIの航空機エンジンや大和ハウスの住宅で法令違反の不正が露見した。昨年以前にはスズキ、マツダ、スバル、ヤマハ発動機、日産、神戸製鋼、三菱自動車で不正が相次いだ(下の表)。計9社のうち何と自動車メーカーが5社も占めている。

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 いずれも長期にわたって、定められた検査方法を勝手に変更したり、排ガスや燃費データを改ざん・隠蔽したり、無資格者に検査させたりと、日本のモノづくりの信頼を失わせる行為を繰り返していた。なぜ、これほど続発するのか、原因と背景を考えてみたい。

国から委ねられた完成検査の権限を悪用

 出荷する新車は、道路運送車両法によって1台ごとに排ガスやブレーキ、ライトなどが国の保安基準を満たしているかどうかを検査することになっている。しかし、国内メーカーの場合、国はこの検査をメーカーに代行させ、一定の専門知識や技能を持つ有資格者が完成検査をすれば、国の車検を受けたものとして認定する。

拡大スズキの主力・湖西工場の全景=同社HPより

 国が検査を委ねるのは、メーカーがルール通りに正しく行うという信頼関係に基づいている。しかし、5社はその権限委譲を悪用して信頼を裏切った。

 日産の昨年12月の発表によると、後輪ブレーキの制動力を検査するのに、ブレーキペダルを踏むだけでなくパーキング(駐車)ブレーキを合わせて使用していた。駐車ブレーキの検査ではブレーキペダルを合わせて使用していた。

 スピードメーターの検査では時速40キロを維持して測定しなければならないのに、40キロに到達した瞬間に測定していた。ユーザーの安全に直結するこうした検査が、実にテキトーに行われていたことに驚く。

 日産は長年にわたって検査の有資格者を十分育成せず、無資格者が使うインチキ用のハンコまでそろえていた。完成検査をスムーズに通すために、意図的に専門知識が劣る無資格者にやらせていたのではないかという疑いすら出てくる。

 この不正は国交省が日産車体・湘南工場(平塚市)を抜き打ちで立ち入り検査して判明した。これを受けて国交省が他メーカーにも点検を指示したところ、各社の不正事例が続々出てきたのである。現場も経営者も法令順守意識が薄く、検査体制の構築を軽んじていたといえよう。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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