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 綿矢りさ氏がデビューから10年目に発表した小説『かわいそうだね?』(文芸春秋)が大江健三郎賞に決まった。これはひじょうに意義ある授賞と言える。

 大江賞はこれまで、劇作家でありながら小説も発表する岡田利規氏や、エンターテインメントの要素を持ち込んで読者を広げつつある中村文規氏、評論の安藤礼二氏らを選んできた。いずれも先鋭的な感覚を帯びた作品で、ここには、ユニークな才能を顕彰することで日本の文学界をなんとか活性化させようという大作家の愛情が感じられる。

 綿矢氏は、史上最年少の19歳で芥川賞を受け、受賞作『蹴りたい背中』はミリオンセラーとなった。だが、寡作だということもあり、その後は数年に一度、新作を発表してもかつてほどの脚光は浴びなくなった。2011年秋に出た文芸誌「文芸」(河出書房新社が「綿矢りさ特集」を組んでいたが、その中で綿矢氏は、書こうとしながらもなかなか作品に仕上がらない苦悩を語っている。

 『かわいそうだね?』は昨年秋に刊行されたものの、各紙誌のインタビューや書評、年末回顧でも、必ずしも取り上げられなかった。

 しかしながら、 ・・・ログインして読む
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筆者

小山内伸

小山内伸(おさない・しん) 評論家・専修大学教授(現代演劇・現代文学)

1959年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。ロンドン滞在を経て1989年、朝日新聞社入社。2013年に退社するまで、主に学芸部(現・文化くらし報道部)で文芸・演劇担当を務める。著書に『ミュージカル史』(中央公論新社)、『進化するミュージカル』(論創社)。日本演劇学会会員。

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