2013年04月10日
4月13日公開の『天使の分け前』(2012)はちょっと違う。同じリアルでも、初めて今の自分に切実な問題に触れていて、ひどく心を動かされた。なぜなら、その中心テーマが若者の就職だったからだ。
1990年代までだったら、イギリスの地方の若者たちに仕事がない話なんて遥か遠くの物語に見えただろう。ところが21世紀になってからは、日本でも若者が正社員や正職員になることが極端に難しくなった。とりわけ筆者のように大学で教えていると、就活で何十もの会社から断られる学生を毎日見ているため、もはやこれは日本の大問題ではないかとさえ思えてくる。
この映画の中心となるのは、主人公のロビーを始めとして、いわゆる地方の無職の若者たちだ。彼らは仕事がなく、たむろして暴力をふるって他人の金を奪うか、ヤクをやってコソ泥を重ねるような毎日だ。そのうえ、ごろつき同士の長年の抗争まである。
冒頭、裁判所のシーンが写る。格好といい、表情といい、いかにもごろつきといった若者たちに、冷たい声で次々と判決が下される。彼らとは対照的な裁判官や弁護士の冷静なあきらめの表情や、わかりやすい標準英語も印象深い。暴力事件を起こしたロビーはもうすぐ子供が生まれることを理由に刑務所行きを免れて、300時間の社会奉仕労働を命じられる。
映画はこのロビーを中心に、4人の若者たちが社会奉仕活動を続けながら少しずつ再生への道を歩む様子を描いている。
この映画が感動的なのは、いくつかの理由がある。まず一番には、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください