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天才ジョン・フォード監督の『静かなる男』をめぐって(下)――難航した製作過程、ドキュメンタリー『映画の巨人』など

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 1950年代のジョン・フォードは、すでに巨匠としての名声を確立していた。しかし、にもかかわらず、彼の心の故郷アイルランドを舞台にした、いわば彼の“プライベート・フィルム”である『静かなる男』の資金繰りは難航した。

 本作の製作に乗り気だったのは唯一、B級映画プロダクションのリパブリック社のみであった。幸運にも、この映画会社にはジョン・ウェインが所属していたのだ。

 が、それでもリパブリック社の社長H・イエーツは、『静かなる男』の前に“儲かる”低予算モノクロ西部劇をフォードに撮らせた。やはりジョン・ウェイン、モーリン・オハラ、ヴィクター・マクラグレンの出演した『リオ・グランデの砦』だが、これが何とフォードの最高傑作の一本となったのだから、彼の映画的才腕にはあらためて驚嘆させられる。

 なお、当初イエーツ社長は製作費を抑えようとして、テクニカラーの使用にも反対したが、結局のところ、アイルランドの地方色をカラーで描きたいというフォードの意向が通った(『静かなる男』の大部分は、西アイルランドの海岸近くの村、コングでロケーションされたが、スタジオ内のセットで撮られた屋外シーンもある)。

 ところで、ショーンとメアリー夫婦のセックスを暗示するところ、すなわち乱れたベッドのシーツを見たミケリーン/バリー・フィッツジェラルドが、「モーレツ!」と言うシーンが ・・・ログインして読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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