林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ジャコブは映画祭の経営手腕も一流であった。カンヌが世界一の映画祭へと歩むきっかけとなったのは、1983年のメイン会場「パレ・デ・フェスティバル」のオープンだろう。
それまでも一応、メイン会場に入る直前のスターをカメラが追いかけてはいたが、単にスターを至近距離から撮るばかりで、スターを美しく「魅せる」ための演出はお膳立てできていなかった。
だが、「栄光の24段」と呼ばれる階段付きの新会場ができ、さらに1987年からはその上に深紅の「レッドカーペット」が敷かれると、ドレスアップしたスターや監督が、周囲を意識して手をふったり、カメラに向かってしっかりポーズをするようになったのだ。
ジャコブはこのカンヌの風物詩となる光景を、印象的に紹介できるテレビや雑誌といったメディアの力を最大限に利用した。これが映画祭が発展する大きなステップになったことは疑いないだろう。
有料放送最大手のテレビ局カナル・プリュスは、カンヌのオフィシャルパートナーとして存在感を発揮し、今年2015年で22年目に突入した。
カナル・プリュスはカンヌ映画祭の開会式や授賞式などを独占放送できるなど、現在もカンヌと蜜月関係を築いている。この独占放映権は高額で、カンヌ映画祭の予算を潤すのに十分だと囁かれている。
メディア以外のオフィシャルパートナーとしては、パートナー歴35年のエールフランス、32年のルノー、30年以上のジャック・デッサンジュ(ヘアメイク)、25年のネスレ、18年のショパール社(宝飾)、17年のロレアル社、10年のオランジュ(電気通信事業)などがある。
これらの一流企業が、巨大化を続けるカンヌ映画祭を、物資や資金面でしっかりサポートしている。とりわけジャコブがプレジデントに就任した2000年以降、「カンヌはスポンサーとの関係が強すぎる」と揶揄されることも多くなった
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