「ポップ」をめぐる二重の使命と静かな決意表明
2017年05月26日
そういうわけで、いくつかの場面を糸口にして、マルチタレントとしての星野源について考えてみたい。
昭和の典型的な木造家屋を思わせるセット、そしてそこに住む家族という設定で登場する扮装した出演者たち。そのなかで女装して登場した星野源の髪型やスタイルは、セットの印象もあってサザエさんを思わせた。番組タイトルは同じNHKの『おかあさんといっしょ』のパロディ風なので、昭和のおかあさんというところかもしれない。
私が「おっ」と思ったのは、番組のタイトルコールの場面だった。お父さん役の高畑充希や娘役の藤井隆とともに、「おげんさんといっしょ スタート!」と書かれた手持ちのフリップを見せてコールした場面である。
どうということもない場面ではある。だがそれがなぜ印象に残ったかというと、その始まり方がかつてハナ肇とクレージーキャッツ(以下、クレージーキャッツと表記)が出演していた『おとなの漫画』(フジテレビ系、 1959年放送開始)という番組とオーバーラップしたからである。その日の時事的な話題を風刺コントで綴るこの番組もまた生放送であり、スタートは同じく出演者が手に持った番組タイトルのフリップをカメラに大きく映し出すスタイルだった。
星野源のファンであるなら、彼がクレージーキャッツに特別な敬意を抱いていることはよく知る事実だろう。彼の7枚目のシングル『Crazy Crazy』(2014)はそのタイトルの通り、彼らに捧げられたものだ。同曲のMVではクレージーキャッツを彷彿とさせる白いスーツ姿の星野らバンドのメンバーが歌い、演奏する。
西森路代 拡張する「星野源っぽさ」をどう受け止めるか――知る人ぞ知る存在から、たくさんの人が共有する存在へ(WEBRONZA)
だが似ているという意味では、私はマルチタレントの先達とも言うべき青島幸男の存在をその場面から連想した。
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