メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

必見!『偉大なるアンバーソン家の人々』

名家の没落を劇的に描く

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 映画史上に巨大な異物のように屹立するオーソン・ウェルズ。この“呪われた天才”の監督作と出演作のうち14本が、東京・シネマヴェーラ渋谷で特集上映されている。ウェルズ映画と俳優ウェルズをスクリーンで堪能できる貴重なチャンスの到来だが、今回は監督ウェルズのフィルモグラフィーにおける最高作の1本、『偉大なるアンバーソン家の人々』(1942、モノクロ)を取り上げよう(本特集で上映される彼の自作自演作は、監督デビュー作『市民ケーン』、『恐怖への旅』、『上海から来た女』、『謎のストレンジャー』、『マクベス』、『オセロ』であるが、いずれも必見の傑作)。

IVC BEST SELECTION拡大『偉大なるアンバーソン家の人々』(DVD、IVC BEST SELECTIONより)
 監督第2作である『アンバーソン』は、ウェルズ自身のよく響く低い声のナレーションで幕を開ける。「アンバーソン家の栄華は1873年に始まった。田舎町が都市へと変わるまで、その栄華は何年も続いた」――。

 このナレーションが予感させるように、描かれるのは、アメリカ中西部のスモールタウンに大邸宅を構えるアンバーソン一族の栄光と没落であるが、物語は人物間の葛藤や確執を中心に、ラブ・ロマンスを織り込みながら展開する。ただし『アンバーソン』の最大の魅力は、ウェルズの他の傑作と同様、物語と混然一体となった彼ならではの驚嘆すべきバロック的空間描写にあるが、それについては順を追って触れるとして、まずは本作のプロット・人物設定・主題について述べよう。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

藤崎康の記事

もっと見る