メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

仏トップ女優が性暴力を告白、MeToo第2章へ

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

12歳から15歳まで続いた監督による性暴力

 日本で配給されたエネルの出演作品には、セリーヌ・シアマ監督の『水の中のつぼみ』(07)、巨匠・ダルデンヌ兄弟の『午後8時の訪問者』(16)、東京国際映画祭でグランプリを受賞したクリス・クラウス監督の『ブルーム・オブ・イエスタディ』(16)、カンヌ映画祭グランプリ受賞作でロバン・カンピヨ監督の『BPM ビート・パー・ミニット』(17)などがある。さらに現在はカンタン・デュピュー監督のシュールな快作『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』が公開中だし、今後も先のカンヌ映画祭で脚本賞を受賞し、再びシアマ監督とタッグを組んだ話題作『炎の貴婦人の肖像(Portrait of a Lady on Fire)』(19)の公開が控える。

アデル・エネル主演、セリーヌ・シアマ監督の話題作『炎の貴婦人の肖像』の仏版ポスター拡大アデル・エネル主演、セリーヌ・シアマ監督の話題作『炎の貴婦人の肖像』のフランス版ポスター
アデル・エネル(下)が12歳で主演した映画『クロエの棲む夢』の仏版ポスター。本作の監督を性暴力で告発している拡大アデル・エネル(下)が12歳で主演した映画『クロエの棲む夢』のフランス版ポスター。彼女は本作の監督を性暴力で告発した

 エネルの銀幕デビューはかなり早い。11歳の時に兄について行ったオーディションでスカウトされ、12歳の時に映画『クロエの棲む夢(Les Diables)』(02)で初出演と初主演を同時に果たす。監督はクリストフ・リュジアだが、彼こそがエネルが今回告発をした人物だ。現在54歳。エネルの証言によると、撮影中から撮影後の時期も含めた12歳から15歳まで、監督による性暴力が続いたという。

 『クロエの棲む夢』は親に見放された兄と、自閉症である妹との近親相姦的な関係を描いた作品。難しいテーマであるため、エネルは撮影の半年前から準備に入ったという。監督はエネルが他の大人と接触することを嫌い、できる限り周囲と隔離させ、エネルを自分の世界に引き込んでいった。大の大人が特別な目つきで、常に少女に密着して追いかけ回す様子は、当時も撮影スタッフが「フィアンセのようで普通ではない関係」と思っていたそうだが、残念ながら監督に真剣に注意を促せる者はいなかった。

 撮影・公開終了後もエネルと監督は、横浜のフランス映画祭を含め、作品のプロモーションのために一緒に世界を飛び回った。その後も、週末になると「映画の知識をつけるためにDVDを見る」などの口実で、アパートに定期的に呼び続けた。そして2人きりになるとTシャツや下着の中に手を入れてきて、押し返してもまた続けるなど、明らかに性的関係を結ぼうとする態度が繰り返し見られたという。

 彼女は08年のインタビューで『クロエの棲む夢』について振り返り、「トラウマになる撮影。私にとっては生き続けるため、自分を再生させなければならなくなった」と語っている。

 実際、エネルはうつ状態に陥り、

・・・ログインして読む
(残り:約1651文字/本文:約3675文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

林瑞絵の記事

もっと見る