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バクパイプは 他人に聴かせるためにやっているのか

国内唯一人の「職業奏者」がコロナ自粛の渦中で考えた「音楽の本質」【上】

加藤健二郎 バグパイプ奏者

バグパイプは“体力楽器”

スコットランドの「グレート・ハイランド・バグパイプ」。5本のパイプとバッグで構成される拡大スコットランドの「グレート・ハイランド・バグパイプ」。5本のパイプとバッグで構成される
 私が演奏しているバグパイプは、スコットランド(英国北部)の「グレート・ハイランド・バグパイプ」といい、ヨーロッパを中心に数多くあるバグパイプの中でも、最も音が大きく、音質は劈(つんざ)くような攻撃的な音を含んでいるのが特徴である。

 日本人が一般的にイメージするバグパイプには、このスコットランド型が多いと思われるが、アイルランド、スペイン、北欧、東欧から中近東にわたっても、いろいろなタイプのバグパイプがあり、音量、音質、音程や音階などは異なっている。

 バグパイプの名称は、「バッグ」と「パイプ」で構成されていることから来ている。

 私のバグパイプには、5本のパイプがバッグに取り付けられている。このうち、1本が口に咥えての息の吹き込み用、残り4本からは4つの音が同時に出続ける。つまり、4本の笛を吹き続ているに等しい体力を必要とする。

惚れ込んだ音質。劈く音と重層低音のコラボ

 スコットランドの首都エジンバラの街(Minka Guides/Shutterstock.com)拡大 スコットランドの首都エジンバラの街(Minka Guides/Shutterstock.com)
 楽器や奏法の説明を書き始めると長くなりすぎるので、詳細は、別の機会に譲るとして、今回は1点だけ、「音質にこだわる理由」について述べさせていただきたい。

 スコットランド型バグパイプの音質の特徴は、「透き通るような劈く音と、腹に響く重層低音のコラボ」にあり、これが三次元空間を感じさせてくれる。

 この劈く魅力の音質は、大音量を出せる堅い木製リード(楽器内の発音部品)を使用しないと出せない。堅いリードを鳴らすためには、筋力の強さを求められる。

 重層低音の方も、安定して大きい音を出し続けるためには、空気の抜ける開口部を大きめにすることが必要になる。つまり、吹き込むべき空気量が多くなり、強い体力が求められるのだ。


筆者

加藤健二郎

加藤健二郎(かとう・けんじろう) バグパイプ奏者

1961年兵庫県尼崎市生まれ、東京、横浜育ち。早稲田大学理工学部卒。東亜建設工業に土木技術者として勤務した後、15年間の戦場ジャーナリストを経て、日本人初の職業バグパイプ奏者となる。ロック・フェスティバル「サマーソニック」に5年連続出演。ボーカルグループ「GReeeeN」のアルバムに参加。大場久美子バンドやサントリーのCMなどにも演奏で関わる。2017年からバグパイプレッスンを開講。著書は『女性兵士』(講談社文庫)、『戦場の現在―戦闘地域の最前線をゆく』(集英社新書)、『戦場へのパスポート』(ジャパンミリタリーレビュー)、『35ミリ最前線を行く』(光人社)、『密着報告自衛隊―戦闘部隊としての行動と実力』(ぶんか社)など11冊。HPは「東長崎機関」。 twitter: @katokenjiro  FB:https://www.facebook.com/kenjiro.kato.18

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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