林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
フランスでは6月22日から、映画館の営業開始に青信号が灯った。この日、全国2045の映画館(6114スクリーン)のうち、約9割が3カ月ぶりに営業を再開した。
全国仏映画館連盟(FNCF)は、コロナ禍の閉館で延べ約6000万人の観客を失い、興行の損害額は約4億ユーロ(約500億円)と見積もっている。
営業再開の日はお祝いムードに包まれた。パリ9区の独立系映画館サンク・コーマルタンは、0時1分からスタートとなる真夜中の舞台挨拶付き先行上映会を実施。上映作品はグレゴリー・マーニュ監督のヒューマンドラマ『Les Parfums パルファン(香水・芳香)』。主演のエマニュエル・ドゥヴォスも会場に駆けつけ、「以前は映画館でポップコーンを食べる人に耐えられなかったけど、私が間違っていた」と挨拶した。
映画館再開に当たり、全国仏映画館連盟は6月初頭に詳細なガイドラインを作成している。当初は販売する座席の定員を「席数の最大50%」とした。ところが営業再開前日の6月21日に、このルールを撤廃。ただし、全ての席を埋めていいのではなく、家族や友人、カップルなど一緒に来た人は隣に座れるが、別グループとは両側を1席開けないといけないというものだ。
この直前の改正は、最大限、観客を受け入れたいという映画館側の希望を通したものだろう。日本の映画館は、現行では定員が最大50%が多いようだが、グループ客の場合、映画館に来てから急に距離をとっても意味がないと思うので、フランス式にした方が良いだろう。特に子供連れの家族の場合、親子が隣に座れないのは不便ではないか。
マスクは、フランスの映画館は、ロビーなどの共有スペースでは着用が「義務」。しかし、いったん座席に座ってからは、義務ではない。
マスクに関しては、興行者の間でも意見が割れている。中には、独自の判断で着席後も客に着用を促す映画館もある。それに映画館によっても、建物の造りや換気状況は様々。ガイドラインの順守具合も、細かく見ると館によってばらつきがある。個人的には小さめの映画館の場合は、着席後もマスク着用を義務にしてほしいと思う。
ちなみに、フランスはコロナ第2波の到来が指摘されている。ついにパリでは8月10日から、マルシェやセーヌ河岸など人が集まりやすい場所では、屋外でもマスク着用義務が始まるなど、ルールが再び厳しくなった。近いうちに映画館でも、上映中の着用が義務となる可能性もある。
ガイドラインには細かな感染対策が講じてあるが、例えば消毒に関しては、「入り口などに手指消毒液設置。客が触る場所を最低1日2回掃除と消毒。特に階段やエスカレーターの手すり」となっている。室内の消毒は1回につき30~45分かかるため、通常1日に5回上映だった映画館は、3、4回上映に減ってしまった。
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