[1]社会現象となった『モルカー』と異色の長編『JUNK HEAD』
叶精二 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師
日本が「アニメ大国」と語られるようになって久しい。日本の「アニメ」は、人物を線で括って塗りつぶし、写実的平面画や3D-CGの空間で躍動させる「セルルックアニメーション」を指すことが圧倒的に多い。これまで「ストップモーション(コマ撮り)・アニメーション」が注目される機会は極めて少なかった。
「ストップモーション」とは、パペット(人形)や無機物などの立体、またはレリーフや板などの半立体のキャラクターをミニチュアセットや背景画等に設置し、1コマずつ撮影して制作されたアニメーションを指す。従来はCMやミュージッククリップ、NHK・ Eテレのシリーズ枠『プチプチ・アニメ』などが活躍の場であった。ほとんどが短編で、自主制作の意欲作が国際映画祭で受賞しても上映される機会は限られていた。
しかし、近年動画サイトで作家自らが発信する機会が増え、撮影・加工技術が広範にシェアされ、制作ソフトも入手しやすくなったことで、世界規模で地殻変動が起きている。配信を中心に若手作家が次々に作品を発表、民放テレビ局で新作テレビシリーズが放送され、長編映画が制作・公開されるなど、トピックには事欠かない。長く続いた不遇時代を経て、ようやく多様化の光が射し始めたと言える。
2021年はおそらく日本のストップモーション・アニメーションにとって歴史的飛躍の年となる。まさに「新時代」の到来である。

『PUI PUI モルカー』 ©見里朝希JGH・シンエイ動画/モルカーズ