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『ちむどんどん』の暢子もまた、沖縄的で過剰なヒロインだった

『ちゅらさん』『純と愛』……沖縄朝ドラに見る“困った娘たち”の系譜

菊地史彦 ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師

 Twitterの「#ちむどんどん反省会」では、登場人物の性格(キャラクター)も大いに論難された。中でも、ヒロインの比嘉暢子(ひがのぶこ、黒島結菜)の身勝手な態度と独断専行に厳しい批判が集まったことは前稿ですでに述べた。

 確かに彼女の行動には、目に余るものがあった。自分に取り分けられた料理が少ないと文句を言うのはともかく、雇われ先のレストランオーナーに料理の勝負を迫ったり、いらないと断られた弁当を毎日持参して押し付けたり、幼馴染の青柳和彦(宮沢氷魚)の恋人に向かって「あなたがいるからあきらめる」とわざわざ宣言した上で略奪したりと枚挙に暇がない。

 中でも批判者が声を荒げたのは、彼女の「KY」、「空気が読めない」鈍感さだった。これまた私が驚愕したのは、終盤の回で、妹の比嘉歌子(上白石萌歌)にようやく告白した砂川智(すながわさとる、前田公輝)が思わず彼女を抱きしめるかと見えた刹那、駆け寄った暢子が代わりに歌子を抱きしめてしまうという場面。もちろん、これは暢子への悪評を逆手に取った脚本家・演出家の仕業なのだろうが、思わず唸ってしまった。

「ちむどんどん」のきょうだいたち(左から)妹役の上白石萌歌さん、長兄役の竜星涼さん、主役の黒島結菜さん、姉役の川口春奈さん=2021年12月、沖縄県うるま市拡大『ちむどんどん』のきょうだいたち(左から)妹役の上白石萌歌さん、長兄役の竜星涼さん、ヒロインの黒島結菜さん、姉役の川口春奈さん=2021年12月、沖縄県うるま市

 ここで考察したいのは、沖縄を舞台とする朝ドラのヒロインたちに共通する性格的傾向である。どうも、彼女たちはよく似ているのだ。

 もちろん、ヒロインたちは、「明るく・元気に・さわやかに」というキャラクタライズを宿命的に課されている。これは破ることを許されない“お約束”であって、多少のズレ・ブレが生じても、彼女たちはここへ必ず戻ってこなければならない。ただ、沖縄のヒロインたちには、もうひとつ無鉄砲というか、“所かまわず/相手かまわず”みたいな破天荒系のニュアンスが付け加えられるのが常である。

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筆者

菊地史彦

菊地史彦(きくち・ふみひこ) ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師

1952年、東京生まれ。76年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立。企業の組織・コミュニケーション課題などのコンサルティングを行なうとともに、戦後史を中心に、<社会意識>の変容を考察している。現在、株式会社ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員。著書に『「若者」の時代』(トランスビュー、2015)、『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー、2013)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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