2019年12月25日
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが、気候行動サミットで怒りの演説をしたことで、気候変動抑止への取り組みが世界的に注目されました。16歳の高校生の発言は大人たちの欺瞞や怠慢を暴くもので、その思いは各国の若者たちにも共有されています。日本でも温暖化対策などを訴えて金曜日に学校を休む活動「Fridays For Future Japan(未来への金曜日)」が広まっています。活動に加わる高校生2人に思いをつづってもらいました。
酒井功雄 さかい・いさお 東京都立国際高校3年。2001年、東京都中野区生まれ。17年に1年間米国ミシガン州に留学。翌年12月から国際環境NGO350.orgのボランティアとして活動。趣味は鉄道の写真撮影。学校では水泳部に所属しているが、泳ぎは苦手。哲学や社会学にも興味があり、米国のリベラルアーツ大学への進学を目指している。
私は「環境問題」にまったく興味がなかった。東京で生まれ育った私は、自然に親しむこともなく、教科書に「地球温暖化」と書いてあるのを見ても、遠い誰かの問題だと思っていた。
日本の銀行は、世界的に見ても多額の資金を、石炭を始めとする化石燃料に投融資している。人々が銀行に預けたお金が、温暖化を助長している。350.orgは、化石燃料から投資を撤退させる「ダイベストメント」を世界中で展開している団体だ。
シンガポールに旅行した時、現地の350.orgのメンバーで、物理教師をしているデイブさんに会った。彼は、昼飯を食べながら「このまま気温上昇が続けば私たちの未来は危ない」と語った。そして気温が4度上昇した世界の地図を私に見せた。
私は目を疑った。地図には「低緯度の国は、干ばつや洪水で住むことが不可能になる」とあった。「氷が解けた南極で作物を育てることができるようになるだろう」とも書かれていた。デイブさんは「もしこんなことになったら、低緯度地域の人たちは移動せざるを得なくなる」と語った。大量の気候難民が生まれ、紛争が起こってもおかしくない。世界平和にも関わる問題だ。その地図で日本は、干ばつを示す茶色に塗られていた。このまま気候変動が進めば、自分たちの未来はなくなり、争いや異常気象に悩まされることになってしまう。
ちょうどそのころ、16歳のスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんの動画を見た。彼女の発言は深く胸に刺さった。
「あなたたち大人は嘘つきだ。私たちに未来は希望を持つべきものだと言った。しかし現実はどうか。あなたたちは私たちの未来を奪っている」「2070年、私には子供がいることでしょう。その時、彼らは言うかもしれません。なぜ、あなたたちは、まだ時間があった時に何も対策をしなかったのかと」
すでに干ばつ、洪水、台風などで、多くの人たちが苦しんでいる。化石燃料を燃やし続ければ、もっと大きな気象災害に見舞われるようになるかもしれない。いま行動を起こさなければ、未来を守ることができなくなる。この恐怖や危機感を共有したいと思った。
彼女が始めた「Fridays For Future(フライデー・フォー・フューチャー、FFF)」、別名「学校ストライキ」の日本でのアクションがあると聞き、参加した。
今年2月に最初に国会前でスピーチをした時の参加者は20人程度だったが、3月には約100人、5月は約300人と増えていった。9月の「グローバル気候マーチ」には東京では約2800人、全国で約5000人が参加した。
2月のアクションに参加した高校生は僕一人だった。「声を上げる高校生はまだ少ないのか」と
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