2013年06月14日
▽筆者: 奥山俊宏
▽この記事は 2013年6月5日の朝日新聞に掲載された原稿に加筆して再構成したものです。
▽テレビ会議映像詳録1: 3月16日午後4時56分から午後5時まで 格納容器圧力上昇を誤認し、注水量の削減を検討
▽テレビ会議映像詳録2: 3月17日午前7時34分から午前7時39分まで 「格納容器にちっちゃい穴が開いているかも」
▽テレビ会議映像詳録3: 3月17日午前8時24分から午前8時28分まで 「オーバープレッシャーになるので注水を絞って」
▽テレビ会議映像詳録4: 3月17日午前8時45分から午前8時53分まで 「2号機も一定のデータの推移があるので給水量の見直しを」
▽テレビ会議映像詳録5: 3月17日午前9時16分から午前9時21分まで 柏崎刈羽原発所長「格納容器は気密性を維持してない」
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■換算式の取り違え
福島第一原発2号機の原子炉は2011年3月14日に冷却できなくなり、核燃料が過熱して溶融(メルトダウン)した。思うように排気(ベント)ができず、格納容器内の圧力が高まって大規模破損し、致死量の放射性物質が放出されるかもしれないと恐れられ、当時は、先に炉心溶融した1号機や3号機よりも事態ははるかに深刻と考えられた。15日午前6時過ぎには一時的に、約70人を残して作業員の大部分が福島第一構内から立ち退いた。しかし、直後の同日午前7時20分に格納容器の圧力が保たれていることが分かり、東電は作業員を福島第一に戻し始めた。
■事実と異なる「圧力上昇」を発表、「格納容器健全性の判断材料」と説明
16日午後の東電本店の記者会見では、すでに格納容器が破損して気密性を失い、圧力が大気圧レベルに下がっているのではないかとの質問が相次いだ。
■柏崎刈羽原発所長「夢物語」批判の後も注水を絞る
原子炉への注水の絞り込みは幻の「圧力上昇」への対策として検討が始まっていた。
「崩壊熱が小さい中で圧力が上がるのは(格納容器内部の)自由空間が小さくなっている可能性がある」「注水量を減少させることが出来るのではないかとこちらでは考えておりますけれども、見直していただけないでしょうか?」
東電が昨年11月末から記者に開示しているテレビ会議の映像によれば、2011年3月16日午後4時56分、本店の社員が「2号機の圧力が上昇傾向にあります」と指摘し、福島第一に注水削減の検討を指示した。格納容器が水で一杯になって気体のスペースが減り、圧力が上がる事態を恐れたとみられるが、実際には、データは誤りで、水は蒸気となって外部に漏洩しており、圧力の上昇傾向は幻だった。
翌17日午前7時34分、福島第一から本店に「とりあえず、今、2号の流量を半分まで落としてあります」と報告があった。この後の同日午前8時25分、本店ではさらに「崩壊熱に応じた発生蒸気相当」である毎分166リットルほどに注水量を絞りたいとの議論があった。
「それ以上やったらベッセルのほうがオーバープレッシャーになっちゃう」
本店の技術者たちは格納容器の圧力が過大になるのを心配していた。
「かねて2号機についても一定のデータの推移がありますので、そろそろ給水量の見直しが必要かなというタイミングです」
これを受けて午前8時52分、福島第一から「2号機の注水のポンプですが、毎分250リットルのとこまで絞ることにはうまくいきました」との報告があった。
一方で、16日夕方から格納容器の圧力の値は75キロパスカルに下がっており、注水を絞ることには疑問の声があった。17日午前7時35分、本店の社員が電話に向かって「『圧力が上がってる』と言ったんだけど、下がっちゃったんです」「格納容器にちっちゃい穴開いてるかもしれない」と言い、注水量について「絞る必要はあまりないと思うんだけど」と話す声がテレビ会議システムで録音されていた。
また、同日午前9時16分、柏崎刈羽原発の横村忠幸所長がテレビ会議の中で、格納容器について、「形は維持してるけれども、気密性の機能は維持してないと思います」と指摘し、注水の量を絞ることに強く反対した。
「注水した水が全て蒸気になって(格納容器の上蓋のすき間から外に)出てるというふうに考えてます。かけた水はほとんどスプレー状態で蒸発して全て大気に放出されている。ですから、注水した量が全て格納容器の中にたまっているというふうに想定して水位を絞ることには反対です」
本店はこれに対して「検討して万全を期したい」と応じたものの、テレビ会議の中ではこれ以上の議論はなかった。
17日午前11時半以降の注水量については、東電が原子力安全・保安院に当時送っていたファクスに記録されており、それによれば、同日正午過ぎまでは毎分250リットルのペースで注水し、その後、毎分170~180リットルに減らしていた。これによって、午前8時25分に本店で議論された「崩壊熱に応じた発生蒸気相当」にほぼ見合う注水量まで絞られた。横村所長の意見とは逆の
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