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3・11の衝撃が残ったままに日々を送っている。16年前の阪神大震災のことを浮かべつつ、照らし合わせて見通せることもあるのだが、多くは手に余って思考は停止したままに立ちすくんでいる。

 阪神大震災のときは、直後に被災地に入り、折々に現地を歩いてきた。そのときの縁で、いまもお付き合いをさせていただいている人もいる。

 当時、神戸市内のアパートで下宿していた大学生の息子を圧死によって失った母がいる。彼女は悲嘆の底をさまよう年月を送ってきた。いまもそうであり、これからもそうなのだと思う。時間は悲しみを癒してはくれるが癒し切ることはない。そのことは東日本各地で生まれた万を超える死者・行方不明者の家族においてもきっと同じであろう。

 阪神・魚崎地区は全壊・全焼を受けた。零細な小売店を営む高齢の人々が多かったが、自宅兼用の店を再建できたのは半数に満たない。生活再建の困難さもまた重なろう。

 このたびは原発破壊による放射能汚染が加わった。破滅的な被災は回避されたようであるが、見えない傷はじくじくとうずき続けている。

 このような万が一の事態は、警告としては耳にしていた。ただ、聞きたくない、見たくないものとして意識の外に放り出してきた。それが現実となって立ちすくんでいるのである。

 政府の危機管理に手落ちがあった、東電の対応がケシカラン……というのはその通りだ。けれども

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筆者

後藤正治

後藤正治(ごとう・まさはる) 後藤正治(ノンフィクション作家)

ノンフィクション作家。1946年京都市生まれ。京大卒。医療、スポーツなどをテーマに執筆活動を続けている。著書に『遠いリング』(講談社ノンフィクション賞)、『リターンマッチ』(大宅壮一ノンフィクション賞)、『スカウト』、『清冽――詩人茨木のり子の肖像』ほか。

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