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[25]語彙力、英語力、体力、そして投球力…大阪桐蔭・藤浪晋太郎の強さとは?

守田直樹 フリーライター

 大阪桐蔭の藤浪晋太郎は、高校時代の松坂大輔(横浜、現・レッドソックス)や田中将大(駒大苫小牧、現・楽天)のようなお茶目な一面を見せることはない。あのころ生意気盛りだったダルビッシュ有(東北、現・レンジャーズ)と違い、不機嫌になることもない。お立ち台に立ち、記者の質問が聞こえないときには、ダルより高い197センチの背を折り曲げるようにして聞き直し、しっかり答える。

 性格はいたって穏やかだ。

 大阪桐蔭に入学後は一度も怒ったことがないと本人は言う。決勝戦で3回に悪送球をした2年生サードの笠松悠哉が証言をする。

「どれだけミスしても怒ることはもちろん、嫌な顔をされたこともありません。クールっていうのか、笑って対応してくれるのがやっぱ、さすがエースだと思います」

拡大大阪桐蔭の藤浪晋太郎投手

 努力家でもある。過去の投球フォームをビデオで入念にチェックする姿を笠松は何度も見ている。選手全員が西谷浩一監督に提出する「野球ノート」に、ページいっぱいに書き込むこともある。昔のノートを引っ張り出し、当時の考え方などを確認することもあるという。

「藤浪はいろんなことに好奇心が強く、マイペースですね」(西谷監督)

 下半身を鍛えるために走ることの重要性を説けば、走りつづけられるのが藤浪だった。

 取材に応える語彙が豊富なのは、本好きのためだ。最近読んだ本はサッカー日本代表主将の長谷部誠著『心を整える』。

「野球だけの考え方になってしまうのは嫌なので、サッカーの本も読んで違う考え方に触れられて良かったと思います」

 東野圭吾の小説なども好きで、得意科目も国語。幼少時から英会話スクールに通い、中学時代に英検の準2級を取得。「学校の英語は得意じゃないけど、リスニングには自信があります」と、さらりと言う。

 有友茂史部長は、藤浪の頑固な一面を語る。

「素直に何でも『はい』というタイプではありません。自分の意見を必ず言うし、すべて自分の頭で相手の話を理解し、ちゃんと相手に伝えたいという思いがあるようです」

 自分の意思と異なるマスコミ報道に不満もあったようだ。だが、それについて聞いてみると、クールに言い放つ。

「でも最近は別に何とも思いません。どうしても面白おかしく書かれてしまうので、その点は仕方ないのかなと思って」

 穏やかで賢い努力家だが、マウンド上と同じように不器用さをもっているのが藤浪だ。

 春夏連覇への道のりは、センバツを制した4月4日の翌日から綿密な計算を元にスタートした。

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筆者

守田直樹

守田直樹(もりた・なおき) フリーライター

1968年、山口県生まれのフリーライター。野球と日本酒と天然温泉が大好きな趣味人。共著に『横浜vs.PL学園』(朝日文庫)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです