メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

[2]スケーターとして高橋大輔に残された時間

青嶋ひろの フリーライター

 昨今、競技での男子シングルの技術の進化は凄まじい。4回転が1プログラムに2回、3回、種類もトウループだけでなくサルコウ、ルッツなどに挑戦する選手が出てきた現在、羽生結弦は、23歳という年齢が競技スケーターとしてトップに立ち続けられる限界だ、と考えたのかもしれない。

 ここまで過酷な状況を作り上げたのは、他ならぬ羽生自身でもある。彼やハビエル・フェルナンデス(スペイン)ら、強力なジャンパーが有無を言わさずこの時代を作り上げてきた。

 過酷な4回転競争に身体が耐えられる間は、先頭を切ってこの時代を引っ張っていくつもりだろう。でも、トップの座を若い世代に譲るべき刻が、前の世代よりも早く来てしまうことも、彼は承知の上だろう。

 だがそこで、スケーターとしての自分の役割が終わる、とは思っていない。世界一のジャンパーである彼が、その座を早々に明け渡すのならば、次は人々を魅了するスケーターとして世界一になればいい、そう考えているのではないか。おそらく、この推測は間違っていないはずだ。

 さらにその先、自分がプロスケーターとして耳目を集めることで、アイスショーを今よりもっとパフォーミングアートの、興行の、一ジャンルとして認知されるものに押し上げてやろうじゃないか――そこまで羽生結弦が考えていることを期待したいのだ。

アイスショーを芸術へ  

 やはりフィギュアスケートのファンとしては、悔しいのである。

アイスショーで共演した高橋大輔さん(上)と浅田真央=日刊スポーツ拡大アイスショーで浅田真央と共演した高橋大輔=2014年12月のクリスマスオンアイスで、提供・日刊スポーツ

 たとえば高橋大輔

・・・ログインして読む
(残り:約1109文字/本文:約1722文字)


筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

青嶋ひろのの記事

もっと見る