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批判を浴びた勝負に徹した戦術で高まった結束

西野監督と長谷部主将の土壇場の冷静な意思疎通、いざ強敵のベルギー戦へ

増島みどり スポーツライター

 7月2日、ロストフで行われるW杯ノックアウトステージ(16強のトーナメント)ベルギー戦に向け、2大会ぶり3回目のトーナメント進出を果たした日本代表は6月30日、キャンプ地カザンで約1時間のトレーニングを行い、試合地へと出発した。ピッチには何も道具がないまま、ランニングや体操でリカバリーを最優先するものだった。

 西野朗監督(63)はポーランド戦終盤、0-1で負けたまま試合を終わらせる戦術を取り、大会初のフェアプレーポイント(FPP)適用で16強進出を果たした戦術について改めて聞かれると「もう終わった話。今はあさって(2日の試合)のことしか考えていない」と、表情を変えずに答え史上初めての8強進出に集中した。

 29日のミーティングでは選手に「晴れの舞台でブーイングを浴びさせてしまった。選手のせいではなく、自分が選んだ戦術を実行してくれた選手に申し訳なかった」と謝罪したという。

 一方で、グループリーグ突破がかかる3カ国が同時進行で試合を行うなか、猛烈なブーイング、批判を浴びながらも次ラウンド進出をかけて勝負に徹した「チーム力」はポーランド戦後、一層高まっている。

 厳しい時間帯、もし1人でも違った考え、プレーをしていれば命取りになる。

ポーランド戦後半、武藤と交代でピッチに向かう長谷部(中央)。西野監督は0-1のまま試合を終わらせることなどを指示した=2018年6月28日、ロシア・ボルゴグラード拡大ポーランド戦後半、武藤と交代でピッチに向かう長谷部(中央)。西野監督は0-1のまま試合を終わらせることなどを指示した=2018年6月28日、ロシア・ボルゴグラード
 長谷部誠主将と監督の土壇場でのコミュニケーション、長谷部がその決断をエンドラインに駆けて行ってまで、アップしていた本田圭佑、香川真司、原口元気に戦況と戦術をしっかりと伝えた冷静さ、すぐにピッチに伝えた本田、香川の落ち着き。何よりも監督の戦術を信じてベンチが全員でそれを貫こうとした数分間は、ここまでわずか2カ月の準備期間しかなかった代表の結束を、一気に固める時間にもあったのかもしれない。
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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